東洋高等学校 (旧制)

東洋高等学校：戦後の短い歴史と、女性教育への意志

東洋高等学校は、千葉県習志野市（当時、千葉郡津田沼町）に存在した私立の旧制高等学校です。その歴史は、太平洋戦争という激動の時代と深く結びついています。東洋女子歯科医学専門学校が、1945年の空襲で校舎を焼失したことが、東洋高等学校設立の直接的なきっかけとなりました。

戦後、仮校舎として旧陸軍の兵舎を使用することになった東洋女子歯科医学専門学校は、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）による審査で大学への昇格を認められず、「B級」判定を受けました。これを受け、学校を運営する財団法人は、歯科医学専門学校の新規募集を停止し、在学生の卒業までを見届けることとしました。

そして、学制改革までの代替措置として、高等学校令に基づく旧制高等学校、すなわち東洋高等学校を設立することを決定したのです。これは、戦後日本の高等教育制度の変遷を象徴する、いわば「戦後特設高等学校」の典型例と言えるでしょう。

東洋高等学校は、理科乙類のみを設置し、修業年限は3年でした。1947年7月に開校し、男女合わせて40名の生徒を募集、寮生活を必須としました。しかし、大学への昇格が実現しなかったため、1948年度の募集は停止されました。

1950年3月、東洋高等学校は第1期卒業生を送り出し、その歴史に幕を閉じました。多くの卒業生は、新制大学の医学部へ進学していったと伝えられています。同時期に、東洋女子歯科医学専門学校も廃校となりました。

東洋高等学校はわずか2年余りの短い期間しか存続しませんでしたが、その存在は、戦後の混乱期における教育への揺るぎない意志を示すものです。また、東洋女子歯科医学専門学校の理念を継承し、1950年5月には英語科を主体とした東洋女子短期大学が開設されました。これは、戦後日本で流行していた英語学習熱も背景にあると言われています。東洋女子短期大学は、現在の東洋学園大学へと発展していくことになります。

東洋高等学校では、共学制を採用していましたが、入学者のほとんどは男子学生でした。これは、前身である女子歯科医専とは対照的な構成と言えるでしょう。また、B級判定、高校併設による経営負担の増大、そして戦後の労働運動の高まりといった要因から、教職員と理事会の間で対立が発生したという記録も残っています。

廃校時には、2年生が在籍していましたが、彼らは2年次修了扱いとして他の大学への編入が支援されました。短い期間ではありましたが、旧制高校の伝統として寮歌も作られ、作詞は岡山厳、作曲は平井康三郎が担当しました。その寮歌は、東洋高等学校の歴史を偲ばせる貴重な遺産と言えるでしょう。

東洋高等学校は、戦後の混乱期に誕生し、短期間で消滅した学校ですが、その存在は、戦後の日本の高等教育制度、そして女性の社会進出を促進しようとした努力を象徴する重要な事例と言えるでしょう。その歴史は、関連書籍や史料を通じて、現在も語り継がれています。

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