東谷遺跡

東谷遺跡について

滋賀県高島市今津町に位置する東谷遺跡は、古代製鉄の貴重な遺構が存在する場所として知られています。この遺跡は、今津町教育委員会によって、壮大な製鉄関連の調査が実施された結果、その存在が広く認識されることとなりました。ただし、遺堀の一部が未調査であるため、具体的な製鉄炉などの遺構についてはまだ確認されていません。しかしながら、遺跡内の1箇所では、長さ約3メートル、幅1.7メートル、厚さ30センチメートル以上の巨大な鉧塊が発見されました。これらの鉧塊は、操業中に炉内の温度が急激に下がったことから生じた失敗の証拠と考えられています。

発掘調査と調査の成果

2000年の7月から9月にかけて、滋賀県教育委員会が試掘調査を行い、その結果、多数の製鉄関連遺物が出土しました。次いで、2001年10月から12月にかけて行われたさらなる調査によって、これらの遺構や遺物がより詳細に確認されました。2002年と2003年には、整理調査が行われ、遺跡の持つ価値がさらなる理解を得ることになりました。

製鉄操業の年代

試掘調査で出土した製鉄関連遺物は、総重量で約2219.9キログラムにも及びますが、出土した土器類は数点のみで、そのため具体的な操業時期の特定は極めて難しい状況です。中には、かろうじて口縁部が残る須恵器坏が含まれており、7世紀後半から9世紀のものと推定されています。しかし、これも自然流路を経て流れついたものであり、本来の製鉄活動時期を正確に確認することは困難です。さらに、出土した木炭に対して放射性炭素年代測定を行った結果、6世紀末から8世紀後半という年代が得られました。このように、鋳造技術や材料の利用に関して、様々な研究が進められています。

古墳時代後期の関連性

東谷遺跡の近隣に存在する甲塚古墳群11号墳からも鉄滓が出土し、その須恵器の年代観から5世紀末の鉄生産が推測されています。この鉄滓は、初めは製錬滓と見なされたものの、後に鍛冶滓に分類されるようになりましたが、この変更にはさらなる検討が求められています。また、今津町内の妙見山古墳群38号墳やその他の遺跡からも鉄関連の遺物が出土し、鍛冶作業の他、製鉄技術に関する情報が多数発掘されています。

今津製鉄遺跡群の役割

東谷遺跡は今津製鉄遺跡群の一部であり、このグループには他に木津製鉄遺跡や山本遺跡、谷八幡遺跡などが含まれています。これらの遺跡は、古代の寺院と相互に関連し、地理的な位置や製鉄活動においても重要な役割を果たしていた可能性が指摘されています。特に、今津製鉄遺跡群の各遺跡が寺院近くに位置していることから、古代寺院の建設や製鉄業の発展には密接な関連があったと考えられています。既に、木津製鉄遺跡の年代が8世紀末から9世紀初頭と特定されている一方、他の遺跡の操業時期は依然として不明瞭です。

古代の文献に見る製鉄

奈良時代には、『続日本紀』において高島郡の鉄生産に関する記録も残されています。特に藤原恵美押勝が近江国の鉄穴を賜る旨が記されており、彼が当時の有力者であったことから、高島郡での製鉄活動に大きく関わっていたことが伺えます。

このように、東谷遺跡は製鉄の技術や社会的背景を理解する上で非常に重要なエリアであり、今後もさらなる研究と発見が期待されています。

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