東部馬脳炎

東部馬脳炎（EEE）について

東部馬脳炎は、トガウイルス科アルファウイルス属に属するウイルスが原因の人獣共通感染症です。この病気は、主に北アメリカの湿地帯で蚊と小型鳥類の間を循環する「東部ウマ脳炎ウイルス」によって引き起こされます。ウイルスはウマやヒトの他にも両生類やは虫類に見られますが、人への感染は特に、鳥の血を吸った蚊からのみ確認されています。

感染経路と症状

ウイルスに感染したウマは、5日から14日の潜伏期間を経て、発熱や食欲不振などの初期症状を呈します。東部馬脳炎ウイルスの影響で、ウマの脳に非化膿性の炎症が生じることが確認されています。人間の場合、大多数の感染者は無症状のまま過ごすことが多いですが、潜伏期間はおおよそ3から10日であり、高熱や悪寒、倦怠感、筋肉痛といった症状が現れることが一般的です。多くは1〜2週間で回復しますが、脳炎を発症した場合は非常に危険で、昏睡状態や死亡に至ることもあります。脳炎を引き起こした患者の致死率は50%から75%に達し、特に子供や高齢者においてリスクが高まります。

最近の流行状況

2019年にはアメリカの8つの州で流行が発生し、36名の感染者が確認され、その内14名が亡くなるという結果になりました。この流行の致死率は39%でした。通常、東部馬脳炎は年間平均7人の感染者が報告されており、2012年の15人というのが過去10年間での感染者数のピークとなっています。

西部馬脳炎とベネズエラ馬脳炎

東部馬脳炎に近い病気として、西部馬脳炎とベネズエラ馬脳炎があります。西部馬脳炎は比較的軽症で、潜伏期間が5〜10日とされており、脳炎を引き起こした場合でも致死率は8〜15%と低めです。一方で、ベネズエラ馬脳炎は発病率が高く近年の流行では変異による強毒型も見受けられるため、注意が必要です。感染後は発熱のみならず、頭痛や筋肉の硬直が見られることがあります。重篤化すると致死率が10～20%に達することがあります。

生物兵器としての利用

ベネズエラ馬脳炎ウイルスは感染力が非常に強く、発病率も高いため、1950年代から60年代にかけて生物兵器としての研究が行われました。このウイルスは、アメリカ合衆国の生物兵器プログラムでも使用されましたが、1969年にニクソン大統領の命令により廃棄されました。

このように、東部馬脳炎は非常に重篤な感染症であり、特に幼児や高齢者にとって危険が大きいため、予防策や早期の発見が重要です。

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