松下修也

松下修也（まつした しゅうや）

1929年3月6日、東京府に生まれ、2018年5月29日に生涯を閉じたチェロ奏者、教育者。
戦後の日本におけるチェロ音楽の発展に大きく貢献し、草分け的存在として知られています。

生涯

東京音楽学校（現在の東京藝術大学音楽学部）でチェロを学びました。師事したのは平井保三、斎藤秀雄。戦中・戦後の混乱期、西洋音楽が非国民的と見なされる時代に、チェロを風呂敷に包んで隠しながら通学するなど、苦労を重ねました。

1949年、第18回日本音楽コンクールで1位を獲得し、1950年には東京交響楽団との共演でプロデビュー。その後、NHK交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団で首席チェロ奏者を歴任しました。1969年からはオランダへ留学し、研鑽を積みました。

演奏家としては、クラシック音楽だけでなく、現代音楽や日本の民謡など幅広いジャンルの作品を演奏しました。黛敏郎作曲の「独奏チェロのための“文楽”」を初演したことでも知られています。また、プロムジカ弦楽四重奏団のメンバーとしても活躍し、数々の名演を繰り広げました。大原美術館や各地のコンサートホールで演奏活動を行い、多くの聴衆を魅了しました。

教育者としても、洗足学園大学、愛知県立芸術大学、東京藝術大学、くらしき作陽大学で後進の指導にあたりました。くらしき作陽大学では名誉教授の称号を受け、24年にわたり教鞭を執りました。門下生には、大西彩子、中村康乃理、糸川英夫など、多くの優秀な音楽家を輩出しています。

演奏活動

松下修也は、ソロ奏者としてだけでなく、室内楽奏者としても精力的に活動しました。

1960年、黛敏郎作曲「独奏チェロのための“文楽”」を大原美術館で初演。
1993年、北海道南西沖地震の被災者支援コンサートで「江差追分」などを演奏。
1996年、宮沢賢治100周年記念イベントで演奏会を開催。
2000年、大原美術館70周年記念コンサートで「プロムジカ弦楽四重奏団」メンバーとして、30年前と同じ曲目を演奏。
2002年、「グレート・マスターズ」コンサートで、日本のクラシック音楽界を支えた大御所たちと共演。
2005年、インターナショナル チェロ コングレス イン 神戸 2005「グランドコンサート I」に参加。
2006年、早稲田実業学校の記念碑落成式で、糸川英夫教授との縁で記念演奏会を開催。

指導活動

松下修也は、教育者としても多くの音楽家を育成しました。

1965年から1969年まで洗足学園大学講師を務める。
1966年から1969年まで愛知県立芸術大学講師を務める。
1970年、東京藝術大学講師に就任。
1978年、くらしき作陽大学教授に就任。
1992年、くらしき作陽大学名誉教授に就任。
日本音楽コンクールの審査員を務める。
笠岡チェロアンサンブルコンテストの審査委員長を務める。
アマチュアオーケストラ「フェリース・ソニード・ストリングス」の音楽監督を務める。

受賞歴

松下修也は、その功績により数々の賞を受賞しています。

1949年：第18回日本音楽コンクールチェロ部門第1位
1954年：毎日音楽賞受賞
1962年：第13回芸術奨励文部大臣賞
1964年：毎日芸術賞受賞（プロムジカ弦楽四重奏団）
1964年：文化庁芸術選奨受賞（プロムジカ弦楽四重奏団）

プロムジカ弦楽四重奏団

1953年に、岩淵竜太郎を中心に結成された室内合奏団。初期メンバーは、岩淵竜太郎（第1バイオリン）、武内智子（第2バイオリン）、小橋行雄（ビオラ）、松下修也（チェロ）。後に堀伝、江戸純子が加入。1963年にはベートーベンの弦楽四重奏曲全曲演奏を行い、1964年に毎日芸術賞と芸術選奨を受賞しました。

その他の活動

シューベルトの「死と乙女」（マーラー編曲）を日本初演で指揮
熊本県八代市に長年通い、後援会も組織された。
還暦を機に、老人施設などでボランティアコンサートを開始。
趣味は易学、絵画鑑賞。
自身が初演した黛敏郎の「文楽」の他、現代曲から民謡まで幅広いレパートリーを持つ。
2019年、大分市で追悼コンサートが開催された。

ディスコグラフィ

宗像和:セロ弾きのゴーシュ ／ 蜘蛛の糸　岸田今日子(語り)　レコード・カセット
宗像和:セロ弾きのゴーシュ ／ 蜘蛛の糸　岸田今日子(語り)　CD（新規録音）
ふるさとの調べ「チェロがうたう日本の民謡」（石川皓也編曲、ビクター）
竹取物語 （音楽之友社、宗像和作曲、松下チェロ、結城美栄子語り、CD 1999年）

著書

* 『チェロがうたう日本民謡曲集』（音楽之友社）

松下修也は、その卓越した演奏技術と音楽性、そして後進の育成への情熱により、日本の音楽文化の発展に大きく貢献しました。彼の残した足跡は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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