松下和夫

松下和夫：地球環境問題に取り組む日本の先駆者

松下和夫は、1948年生まれの日本の地球環境学者です。環境政策論、環境ガバナンス論、持続可能な発展論、気候変動政策、生物多様性政策、地球環境政策など、多岐にわたる分野で研究を行っています。京都大学名誉教授、国際アジア共同体学会理事長、日本GNH学会会長など、数々の要職を歴任し、環境問題の解決に向けて精力的に活動しています。

環境問題への初期からの関与

松下氏は、東京大学経済学部で理論経済学者の宇沢弘文氏に師事し、同時に工学部助手の宇井純氏が主催する公害自主講座にも参加しました。この経験が、松下氏が環境問題に取り組む原点となりました。設立直後の環境庁に第1期生として入庁し、自然環境保全法制定や自動車排気ガス規制などの政策立案に携わりました。また、環境白書の執筆や長期ビジョン策定にも関与し、日本の環境行政の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。

国際的な舞台での活躍

環境庁での経験を活かし、松下氏はOECD（経済協力開発機構）や国連地球サミット事務局で勤務しました。これらの国際的な舞台での経験は、松下氏が地球環境問題を日本の環境行政の課題として捉え、環境と経済を統合した持続可能な発展思想を展開する上で大きな影響を与えました。また、地球環境基金を通じた環境NGO活動の支援にも従事し、地球環境戦略研究機関設立の提言も行いました。さらに、気候変動枠組条約第3回締約国会議（COP3）の京都への誘致にも貢献しました。

持続可能な発展思想の提唱

松下氏は、ブルントラント委員会が提唱した「持続可能な発展」の概念をさらに敷衍し、環境社会の構築と、そこへ向けた政策変革の必要性を説きました。持続可能な発展とは、環境問題の解決だけでなく、社会的な公平性を確保しながら、制度、技術、資源利用、投資のあり方を継続的に変革していくことだと主張しました。

環境ガバナンスの重視

松下氏は、「ガバナンス」を社会的な意思決定や秩序維持の仕組みとして捉え、「環境ガバナンス」を、政府からの統治と市民社会からの自治を統合し、様々な主体が積極的に関与して問題解決を図るプロセスとして定義しました。この考え方は、多様な主体の参加、情報公開、透明性のある意思決定プロセスの重要性を強調しています。

学術的な貢献と教育活動

京都大学では、大学院地球環境学堂・学舎で教授として、地球環境政策論を担当し、新たな地球文明の創造と地球環境学の構築、そして高度な研究者・実務家の育成に尽力しました。環境ガバナンス論に基づく環境政策評価を日本で最も早く導入した研究者の一人でもあります。

近年の活動と発言

松下氏は、現在も国際アジア共同体学会理事長、日本GNH学会会長を務めるなど、精力的に活動を続けています。また、気候変動問題や持続可能な発展に関する発言も積極的に行っており、脱炭素社会への転換やSDGsの達成に向けた政策の必要性を訴えています。

主な著作

松下氏は、多数の著書を通じて、環境問題に関する知見を広めています。

『1.5°Cの気候危機：脱炭素で豊かな経済、ネットゼロ社会へ』 (2022年)
『気候危機とコロナ禍：緑の復興から脱炭素社会へ』(2021年)
『地球環境学への旅』(2011年)
『環境政策学のすすめ』(2007年)
『環境ガバナンス（市民・企業・自治体・政府の役割）』(2002年)

年表

1948年：徳島県生まれ
1971年：東京大学経済学部経済学科卒業
1972年：環境庁入庁
1976年：米国ジョンズホプキンズ大学大学院政治経済学科修了（修士）
1978年 - 1981年：OECD（経済協力開発機構）環境局アドミニストレーター（パリ）
1989年 - 1990年：環境庁環境協力室長
1990年 - 1992年：国連「環境と開発に関する国連会議（UNCED） 上級環境計画官（ジュネーブ）
1992年 - 1993年：環境庁大気規制課長
1993年 - 1995年：環境庁地球環境部環境保全対策課長
1994年 - 1995年：内閣審議官（併任、内閣総理大臣私的諮問機関「21世紀地球懇話会担当」）
1995年 - 1998年：環境事業団地球環境基金部長
1998年 - 2001年：（財）地球環境戦略研究機関副所長代行
2001年 - 2002年：京都大学大学院人間・環境学研究科教授
2002年 - 2013年：京都大学大学院地球環境学教授
2013年 - : 京都大学名誉教授、（公財）地球環境戦略研究機関シニアフェロー

まとめ

松下和夫は、環境問題の黎明期から第一線で活躍し、日本の環境政策の発展に貢献してきただけでなく、国際的な舞台でも活躍してきた人物です。その研究と提言は、持続可能な社会の実現に向けて、重要な指針を与え続けています。

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