松井興長

松井興長の生涯と功績

松井興長（まつい おきなが）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将で、細川氏の家老を務め、熊本藩の八代城主として知られています。彼は1582年に細川氏の家臣である松井康之の二男として、丹後国久美浜で誕生しました。兄の興之が文禄・慶長の役で戦死したことにより、彼は松井家の後継者としての道を歩むこととなります。

興長は、慶長5年に起きた関ヶ原の戦い時に細川氏と共に戦闘に参加しますが、自らは岐阜城の攻撃で負傷したため本戦には出場できませんでした。戦後、彼の父である康之は、豊前・豊後国で39万石を持つ大名に昇進し、松井家にも大名格の地位が与えられました。慶長16年には、父の隠居に伴い家督を相続し、寛永9年には細川氏の肥後熊本藩への国替えにより、玉名・合志郡で3万石を受けることとなります。

寛永14年から発生した島原の乱では、藩主である細川忠利の命により、彼は派兵の手配や江戸幕府との交渉を担当しました。その一方で、興長は自ら3,700余りの兵を率いて原城の戦いに出陣し、藩の存続に尽力しました。

正保2年、熊本八代城にて隠居していた細川忠興（三斎）が亡くなると、正保3年から興長は八代城を預かることになり、以降八代城は松井家が代々城主として受け継ぐ場所となります。また、松井興長は忠興の六男を養嗣子として迎え、細川家の血筋を引く長岡姓を賜りました。彼は長岡佐渡守と称され、多くの新しい時代を迎える中で家の繁栄に努めました。

興長は、細川忠興、忠利、光尚、綱利の四代にわたって仕えました。特に晩年には、浪費癖のあった若い藩主・綱利に対し、家の存続をかけた書状を提出し、その改革を促しました。彼の信念は、松井家が細川家の筆頭家老として地域の政治を支える役割を果たすことでした。

寛文元年、興長はその生涯を閉じます。彼の死後、松井家は細川一族として代々筆頭家老を務め、明治維新までその地位を保ちました。現在、熊本県八代市には八代市立博物館や松井文庫、松濱軒といった興長に関する史料や美術品が残されており、彼の歴史的な役割を伝えています。また、細川忠隆から彼宛に送られた自筆の書状も松井文庫に現存しており、歴史研究にとって貴重な資料となっています。

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