正保

正保（しょうほう）

正保は、日本の元号の一つで、寛永の後、慶安の前の期間、つまり1644年から1648年にかけて使用されました。この元号が用いられた時期に天皇は後光明天皇、江戸幕府の将軍は徳川家光が在位していました。

改元の背景

正保に改元されたのは、寛永21年12月16日（グレゴリオ暦1645年1月13日）、後光明天皇の即位に伴うものでした。元号が三代の天皇に渡るという前例がなかったため、江戸幕府がこの改元を主導したとの説もあります。寛永の飢饉を受け、幕政の立て直しが求められていた時期であり、摂政である二条康道も幕府からの勘文を受けて改元作業を進めることが求められたのです。

将軍の徳川家光は「年号は天下共に用いるものなれば、武家が定めるべきである」という意向から、改元に関与したことが記録されています。正保5年の2月15日（グレゴリオ暦1648年4月7日）には、次の元号である慶安に改元されました。

正保元号への批判

正保という元号は、いくつかの理由から不評でした。その一つは、「正保」が「焼亡」と音が似ていることです。また、「正」の字は「一にして止まる」と解釈されるなど、縁起が悪いとされる表現があったため、多くの人々から批判の声が上がりました。さらに、「正保元年」と書かれた場合、かつて大乱が起こった「保元」の年を連想させるとの懸念も広まり、これにより再び大乱が起こる兆しがあるとの不安が強まりました。このような世論は京都を中心に広がり、結局、短期間で改元されることが決定づけられました。

意義

正保という元号は、『尚書』正義に「先正保衡佐我烈祖、格于皇天」と記されるように、公平で公正な物事の維持を意味しています。徳川家光は、この元号を採用することで「公家武家の政は正しきにしくはなし、正しくして保たば大吉なり」と考えていたとされています。

正保年間の主な出来事

正保元年（1644年）には、著名な俳人である松尾芭蕉が誕生しました。また、正保3年には徳川綱吉が生まれました。正保3年に行われた日光東照宮の例祭に奉幣使が派遣されるなど、重要な宗教行事もありました。

この期間には、江戸幕府へのさまざまな要請や出来事もあり、たとえば鄭成功が幕府に援助を求めた際に、それが拒絶されるという事例も報告されています。

正保年間には多くの著名人がこの世を去り、特に細川忠興や宮本武蔵（享年64）、柳生宗矩などが彼らの時代の終焉を迎えます。正保元年に松平忠明が、また3年には阿部正次が死去するなど、時代の変化が感じられる出来事が多くありました。

正保という元号は短命でしたが、当時の社会や人々の意識に多くの影響を与えたことは間違いありません。

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