松室重光

松室重光（1873年4月26日 - 1937年1月30日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の建築家です。京都府を中心に数多くの建築物の設計を手がけ、その才能を発揮しました。

生い立ちと初期のキャリア

松室重光は、1873年（明治6年）に京都府愛宕郡下鴨村（現在の京都市）で生まれました。代々、松尾大社や月読神社の神官を務めた家系の出身です。1894年（明治27年）には第三高等中学校を経て東京帝国大学造家学科に入学し、1897年（明治30年）に同大学を卒業しました。大学院に進学しつつ、京都市の嘱託技師としてキャリアをスタートさせました。

1898年（明治31年）には京都府技師に就任し、本格的に建築設計の道に進みます。この時期には、ネオルネサンス様式の傑作として知られる京都府庁舎旧本館や、京都ハリストス正教会聖堂などの設計を手がけ、その才能を高く評価されました。また、社寺建築の修復・保存にも尽力し、京都の歴史的建造物の保護にも貢献しました。

しかし、1904年（明治37年）には部下の汚職事件に連座する形で京都府を退職することになります。その後、1905年（明治38年）には九州鉄道株式会社の技師となります。

関東州での活躍

1908年（明治41年）には、恩師である辰野金吾の推薦により、関東州（現在の中国東北部の一部）の行政機関である関東都督府民政部へ技師として着任します。1916年8月までの8年間は、民政部土木課で唯一の建築技師として、20件を超える建築物の設計に携わりました。これらの建築物の中には、松室重光自筆のスケッチが残されているものも16件あります。

関東都督府における松室重光の活動は、その後の日本の建築界に大きな影響を与えることになります。彼は、異国の地においてもその才能を遺憾なく発揮し、多くの優れた建築物を残しました。

その後の活動と晩年

1917年（大正6年）には土木課長に就任しますが、1922年（大正11年）に関東都督府を依願退職します。その後は、1923年（大正12年）に大阪電気博覧会の嘱託、1927年（昭和2年）には片岡建築事務所に入所し、1930年（昭和5年）には自身の建築事務所を開設しました。

1937年（昭和12年）、松室重光は63歳で生涯を閉じました。彼の足跡は、京都や関東州に数々の建築物として残り、その功績は今もなお称えられています。

主な作品

京都府庁舎旧本館
京都ハリストス正教会聖堂
関東都督府の諸建築

参考文献

日本建築協会80年史（日本建築協会編）
関西の近代建築（石田潤一郎著）
西澤泰彦『海を渡った日本人建築家』彰国社、1996年。ISBN 4-395-00444-X。

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