松平晃

松平晃：昭和の流行歌の先駆者

松平晃（まつだいら あきら）は、1911年6月26日に佐賀県佐賀市で生まれ、本名を福田恒治（ふくだつねはる）といいます。彼は昭和期において流行歌歌手として知られ、特にSPレコードの全盛期において、その名を広めました。松平は「佐賀っぽ」という独特な気質を表現しつつ、鮮やかな歌声で数多くのヒットを飛ばし、スターダムに上り詰めました。また、彼の芸名は「松平の殿様のように豊かな生活がしたい」という願いから付けられたとも言われています。

若い頃から音楽に興味を持っていた松平は、佐賀中学を卒業後に音楽の道を志しましたが、家族からの反対もありました。しかし、兄の助けを得て上京し、武蔵野音楽学校 (現：武蔵野音楽大学) に入学。その後、東京音楽学校 (現：東京芸術大学) に転校し、苦学しながら声楽の基礎を学びました。しかし、家庭の経済的な負担により困難な状況に陥り、諸先輩の助けを借りる中で、1932年に「大川静夫」としてレコードデビューを果たしました。

コロムビアレコードでの活動を開始した松平は、江口夜詩とのコンビで「サーカスの唄」により特に大ヒットを記録しました。この成功により、彼はコロムビアの看板歌手として名を馳せました。彼の代表曲には、初期にリリースされた「忘られぬ花」や「急げ幌馬車」、さらには「曠野を行く」などがあり、各々が大ヒットを記録し、流行音楽界における彼の地位を確立しました。特に「曠野を行く」は大陸歌謡のブームを引き起こしたことでも知られています。

松平は映画にも出演し、その甘いマスクと魅力で多くのファンを引き寄せました。特に日活映画「花嫁日記」や松竹映画「純情二重奏」などの作品では主演を務め、歌手業との二足のわらじを履くことになります。しかし、プライベートでは恋愛における一途な性格が影響し、トラブルが続くこともありました。

1936年から1940年にかけては、松平の人気が絶頂に達しましたが、戦局の激化に伴い、彼のレパートリーも戦時歌謡へと移行していきました。様々な音楽活動を通じて慰問演奏を行い、戦時下の中でその役割を果たしましたが、次第に人気が陰り、1940年にはコロムビアとの契約を終了しました。

その後、松平はタイヘイレコードやキングレコードに移籍しましたが、戦後の業界の変化と彼自身の病気により、活動は困難を極めました。彼は1945年には内地に帰還し、『紅白音楽試合』に出演するものの、以降は徐々に舞台から姿を消していきました。

1956年には松平晃歌謡学院を設立し、後進の指導に力を入れました。彼の指導を受けた多くの歌手が育っていき、松平はその活動を通じて昭和の歌謡界に貢献しました。しかし、1961年2月に体調を崩し、心筋梗塞による死去となりました。49年の短い生涯でしたが、彼の音楽は後世に多大な影響を与えました。

彼の代表曲には「忘られぬ花」、「サーカスの唄」、さらには「花言葉の唄」があります。松平の業績は今日においても高く評価され、伝説的な流行歌手として人々の記憶に残っています。彼の長女、福田和禾子もまた、父の遺志を継いで作曲活動を行い、「北風小僧の寒太郎」などを手掛けています。松平晃は、戦前・戦後の日本の音楽界において、特に重要な役割を果たした存在として、その名を今にとどめています。

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