松平直堅

松平直堅：波乱の生涯と家督相続争乱

松平直堅は、江戸時代前期に活躍した大名であり、清崎松平家の祖です。従五位下・備中守に叙任されました。その生涯は、権力闘争や家族の悲劇、そして自身の決断が織りなすドラマチックな物語でした。

出生と複雑な家庭環境

明暦2年（1656年）、越前福井藩主・松平光通の庶子として誕生しました。母はお三の方（片桐氏）という側室でした。嫡男が不在だったため、光通は直堅を後継者と考えていましたが、正室・国姫の実家である越後高田藩からの強い反対に遭います。高田藩は、将来生まれる男児を跡取りにするよう光通に迫り、起請文まで書かせました。この圧力は、光通と国姫の関係を悪化させ、国姫は男児を産めない苦悩から寛文11年（1671年）に自害するという悲劇的な結末を迎えます。

出奔と父・光通の死

国姫の死後、高田藩は直堅の命を狙い始めます。延宝元年（1673年）、直堅は叔父にあたる越前大野藩主・松平直良を頼り、江戸に逃亡しました。この際、家臣の堀十兵衛が追いかけ、引き返すべきだと説得を試みましたが、直堅は聞き入れず、堀は自刃してしまいます。直良を頼ったのは、直良の外祖父と直堅の母方の親戚筋に繋がりがあったためです。光通は幕府に直堅を「公子」ではないと届け出るなど、苦境に立たされました。そして、延宝2年（1674年）、様々な苦悩を抱えた光通は自害します。

家督相続争いと新たな道

光通の死後、福井藩は後継者問題で混乱しました。遺言通りに庶弟の松平昌親を後継者とする派、長幼の順で昌勝を推す派、そして直堅を擁護する派の3派が対立しました。直堅を支持する藩士約50名は、集団で江戸の直堅の元へ、あるいは幕府へ訴えようとしました。最終的に幕府は、家老の芦田図書が提出した光通の遺言を基に、昌親を後継藩主に決定しましたが、この争いは福井藩に長く尾を引くことになります。

幕臣としての活躍と最期

直堅は延宝3年（1675年）、4代将軍・徳川家綱に拝謁し、従五位下・備中守に任じられ、1万俵の賄料を与えられました。家臣団も整備し、延宝7年（1679年）には赤坂に屋敷を拝領するなど、幕臣として地位を築きました。元禄10年（1697年）、42歳で亡くなりました。跡を長男の直知が継ぎました。

まとめ

松平直堅の生涯は、家督相続争いという激動の時代の中で、複雑な家族関係や政治的圧力と戦い抜いた物語です。庶子という出自や、周囲の陰謀、そして父と正室の悲劇的な最期など、多くの困難に直面しながらも、彼は自身の道を切り開いていきました。彼の生き様は、権力争いの残酷さと、個人の不屈の精神を示す、貴重な歴史的証言と言えるでしょう。家臣団や親族との複雑な人間関係、そして時代の流れに翻弄されながらも、彼は生き延び、独自の道を歩んだのです。その生涯は、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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