松平直矩

松平直矩（まつだいら なおのり）

松平直矩は、江戸時代前期の大名で、官位は従四位下・侍従および大和守である。結城松平家の2代目として知られる彼の生涯は、数度の国替えという波乱に満ちたものであった。

生涯の概要

松平直矩は寛永19年（1642年）に越前国大野藩主・松平直基の長男として誕生した。父の直基は、出羽国山形藩や播磨国姫路藩に国替えを経験したが、姫路へ向かう途中で亡くなってしまう。直矩は慶安元年（1648年）、わずか5歳で家督を相続することになるが、江戸幕府にとって重要な拠点であった姫路の管理は彼の幼少期には適さないとされ、翌年の慶安2年（1649年）には越後国村上藩へ国替えを命じられた。

成人後の寛文7年（1667年）、直矩は姫路に再び戻ることができた。しかし、親族間の騒動に際して彼は出雲国広瀬藩主・松平近栄と連携し騒動の調整に努めたが、結果的に不手際とされ、領地を削減されてしまう。

その後、天和2年（1682年）には豊後国日田藩へ転封され、4年後の貞享3年（1686年）には3万石の加増とともに出羽山形藩へ、さらに元禄5年（1692年）には白河藩へ移封される。これにより格式上では以前の15万石に復帰したが、頻繁な国替えを経験した結果、家中は多くの借金を抱えることとなり、彼は「引越し大名」として知られるようになった。

最終的に松平直矩は元禄8年（1695年）に死去し、享年54歳であった。

逸話と評価

松平直矩には、彼の美少年好きが記された逸話がある。『土芥寇讎記』には、聖人でさえ失敗があるのだから、凡人としてそれを非とは言えないとする見解が示されている。また、彼は”誉の将”と評されることもあった。

彼の愛好する文化や趣味は、当時の藩政においても派手さがあったと考えられており、たとえば彼の日記には、藩主としての仕事や鷹狩り、観劇など様々な出来事が記されている。

日記と官歴

直矩は17歳から54歳までの間、自身の生活や業務を詳細に記録した『大和守日記』を残している。この日記には、藩主としての業務に加え、家族のことや文化的な趣味が見受けられる。

彼の官歴としては、承応3年（1654年）に従四位下・大和守に任命され、その後寛文8年（1668年）には侍従に昇進している。

家族と後世への影響

松平直矩の家族関係には、父・松平直基と母・堀氏がいる。妻として駒姫を迎え、彼女は松平直政の長女であり、継室には東園基賢の娘、丁がいる。また、直矩には複数の子供があり、特に次男の松平基知や養子の女子佐天はそれぞれの名家に嫁いでいる。

松平直矩の生涯は、多くの江戸時代の文化や政治に精彩を添え、その影響は現代においても史学的に評価され続けている。彼に関する書籍も多岐にわたる。特に、杉本苑子の『引越し大名の笑い』や土橋章宏の小説『引っ越し大名三千里』は広く知られ、2019年には映画『引っ越し大名!』として上映された。

まとめ

松平直矩は変動に富んだ生涯を送った大名であり、彼の政治的な手腕や文化的な嗜好は、当時の社会情勢を反映したものといえる。彼の記録や逸話を通じて、江戸時代の一面を知ることができるのは貴重な経験である。

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