松平近明

松平 近明（まつだいら ちかあきら）

松平近明は、出雲広瀬藩の第4代藩主として知られています。彼は直政系の越前松平家の分家から出ており、その存在は藩政において重要な位置を示しています。彼の生涯は波乱に満ちており、特に彼の身体的な健康問題や、藩が直面した困難な財政状況が大きなテーマとして浮かび上がります。

経歴のはじまり

近明は享保元年（1716年）に江戸で生まれました。彼は第2代藩主・松平近時の4男で、その母は側室である大竹氏です。近明が成人する前に、第3代藩主である兄の近朝が享保13年（1728年）に死去したため、近明は兄の養子として家督を引き継ぐことになりました。これは彼にとって思いがけない運命の展開でした。

藩政の苦悩

藩主となった近明は、就任早々から厳しい現実に直面します。享保17年（1732年）に大飢饉が発生し、藩の財政は逼迫しました。その結果、幕府から3000両を借りてその窮状を乗り切る必要がありましたが、翌享保20年（1735年）にも再び飢饉に見舞われ、藩政はさらに困難を極めました。このような状況は、近明にとっても一層のプレッシャーとなりました。

病弱な体を抱える近明は、藩主としての責務を果たすことが困難であり、実際には藩政に直接関与することができたのは稀でした。彼は、登城の際には代理人を立ててその役割を果たすこともあったほどです。健康状態が思わしくない中で、彼は藩政の維持に努めましたが、その努力は多くの制約に縛られたものでした。

隠居と最期

近明は、その生涯の幕を引く準備を整えることを決意し、寛延2年（1749年）8月9日に家督を長男の近輝に譲り、隠居生活に入ります。この際に彼は「猪寛」という号を名乗りました。隠居後は、身体の不調や政治の混乱から解放され、一定の静寂に包まれた日々を送ったことでしょう。

しかし、彼の人生は静かに終わることはありませんでした。宝暦5年（1755年）4月21日、彼は江戸にてこの世を去りました。その享年は54歳でした。近明の死去は、長きにわたり藩を支えてきた彼の存在がもたらした影響を痛感させるものであり、彼が存命中に藩が直面した数々の難局は、広瀬藩の歴史の一部分として語り継がれています。

近明の生涯は、健康問題や藩の財政難という障害に直面しながらも、藩主としての責務を果たそうと努力した姿勢が顕著です。彼の存在は、困難な状況下での指導力や責任感の大切さを教えてくれます。

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