松平重富

松平重富の生涯

松平重富（まつだいら しげとみ）は江戸時代中期の大名で、越前国福井藩の12代藩主として知られています。彼は寛延元年11月16日に徳川宗尹（一橋宗尹）の三男として東京の一橋家屋敷に生まれ、母は細田時義の娘である由加です。

重富は、異母兄である11代藩主の松平重昌が1758年に亡くなった後、1760年3月21日にその養子となり、藩主としての道を歩み始めました。彼は宝暦10年に元服し、従四位上・左近衛権少将に任官することで官位を授かり、兄の名前にちなみ「重富」という名を持つこととなりました。さらに、彼は越前守の称号も受けています。

藩政と財政再建に向けた試み

藩主となった重富は、藩士の知行削減を皮切りに財政再建を目指しましたが、そこには困難が立ちはだかりました。連続する大雪や大火、風水害、疫病による影響が大きく、財政状況は悪化していきます。特に、彼自身は江戸の一橋家の豪華な生活に慣れていたため、贅沢な日常を享受し続け、お金が足りなくなると米商人に対して御用金を課す政策を導入しました。この結果、米価が高騰し、さらには凶作も重なり、福井では貧困層が増加しました。

このような状況下、明和5年（1768年）には藩内で大規模な打ちこわしが発生し、藩政史上最も大きな不満の噴出となりました。重富は藩民の要求に応じて家老の酒井外記らを処分しなければならなかったのです。

幕府との関係と再建の試み

重富は将軍家と縁戚であったため、幕府からの援助を頼りに藩政の再建に努めましたが、天明の大飢饉などの自然災害により、再び財政は苦境に陥ります。寛政2年（1790年）には菜種の専売制を導入し、続いて寛政11年（1799年）には糸会所を設け、塩の専売制を実施しました。

その後、重富は長男の治好に家督を譲り、隠居生活を始めました。彼は左兵衛督に任官され、その後も家格復活のための運動に資力を投じました。越前松平家はその後、官位が不遇を受け続けていましたが、重富は弟の治済や幕閣との関係を通じて官位の舵取りを行い、寛政10年（1798年）にはついに正四位下・左近衛権中将に昇進します。この昇進は、重富が長期間藩主を務めたことも寄与したと考えられています。

彼の藩主としての在任期間は41年におよび、これは福井藩主の中で最も長いものでした。

死去と家族

松平重富は文化6年（1809年）6月18日に62歳で亡くなりました。彼の正室は致姫（徳川宗将の三女）で、長男の治好といった子供を残しています。また、彼には側室もおり、資歴や家族のつながりも含めて、重富の家系は後の時代に影響を与え続けました。

重富の治世は、財政的な問題や自然災害など多くの困難がありつつも、彼自身の政治的な手腕や将軍家との関係を駆使して乗り越えようとした波乱に満ちたものでした。

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