松木庄左衛門

松木庄左衛門：小浜藩の義民

松木庄左衛門（まつのき しょうざえもん）は、寛永2年（1625年）に生まれ、承応元年（1652年）に28歳で亡くなった、江戸時代前期の小浜藩の義民です。実名は明らかではなく、法号から長操（ちょうそう）とも呼ばれています。若狭国遠敷郡新道村（現在の福井県三方上中郡若狭町新道）の庄屋を務めていました。

年貢増徴への抵抗

小浜藩では、関ヶ原の戦い後に藩主が京極氏から酒井氏に代わりました。藩は小浜城の築城などで財政が逼迫しており、年貢として納める大豆の基準を1俵あたり4斗から4斗5升に引き上げ、増徴を図りました。これにより、領民は生活に苦しむことになり、藩に大豆納を元に戻すよう要求しましたが、受け入れられませんでした。寛永11年（1634年）に酒井忠勝が藩主となっても税制は維持され、領民の不満は高まる一方でした。

義民としての行動

寛永17年（1640年）、若狭国内252ヶ村の名主たちは、郡代官所に陳情を行うことを決定し、この年に名主となったばかりの庄左衛門を含む20名が総代として選ばれました。彼らは数十回にわたり直訴を繰り返しましたが、藩は要求に応じませんでした。承応元年（1652年）、総代全員が捕らえられ、厳しい拷問を受けましたが、庄左衛門は最後まで屈することなく、大豆納の引き下げを求め続けました。

壮絶な最期とその後

庄左衛門の不屈の精神に驚いた藩は、やむなく大豆納を元の4斗に戻すことを受け入れました。しかしその代償として、庄左衛門は同国日笠河原で磔に処せられ、28歳という若さで命を落としました。この事件は「小浜藩領承応元年一揆」として知られています。彼の死後、領民は毎年大豆の初穂を神前に供え、彼の功績と勇気を称えました。

庄左衛門の墓は、日笠河原に近い正明寺にあります。昭和になってからは、彼を祀る松木神社が建立され、その遺徳は現在にまで語り継がれています。

参考文献

三上一矢「松木庄左衛門」（『国史大辞典 13』、吉川弘文館、1992年）
青木美智男「松木長操」（『日本史大事典 6』、平凡社、1994年）

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