松本市歴史の里

松本市歴史の里：信州の近代を体感する屋外博物館

松本市歴史の里は、長野県松本市にある松本市立博物館の分館であり、江戸時代後期から大正時代にかけて建てられた5棟の貴重な建造物を移築した屋外博物館です。これらの建物は、松本市の歴史だけでなく、信州の近代史を語る上で重要な役割を担っており、来訪者に豊かな歴史体験を提供しています。

明治期の司法を象徴する旧松本区裁判所庁舎

歴史の里の目玉ともいえるのが、国の重要文化財に指定されている旧松本区裁判所庁舎（旧長野地方裁判所松本支部庁舎）です。1908年（明治41年）に松本城二の丸御殿跡に建てられ、明治憲法下で裁判が行われた法廷として唯一現存する建物であり、検事が壇上に座るという独特な構造が特徴です。2017年の重要文化財指定を機に、「びろーん」と呼ばれる、判決結果を面白おかしく表現した手拭いが販売されるなど、新たな魅力も加わりました。

青少年の更生を支えた旧松本少年刑務所独居舎房

1926年（大正15年）築造の旧松本少年刑務所独居舎房は、1989年まで青少年受刑者や未決拘禁者の収容に使用されていました。当時の厳しい状況を伝える貴重な建物として、歴史の里に保存されています。来訪者は、ここでかつて行われていた更生プログラムや、収容者の生活の様子を想像することができます。

作家・木下尚江の生家：木下尚江生家

江戸時代後期に建てられた武家住宅である木下尚江生家は、作家であり社会運動家でもあった木下尚江の生家です。彼女の生涯や活動、そして代表作『火の柱』などに関する資料が展示され、来訪者は彼女の足跡をたどることができます。

工女たちの宿：工女宿宝来屋

江戸時代後期に野麦街道沿いに建てられた工女宿宝来屋は、明治から大正時代にかけて、飛騨地方から諏訪・岡谷の製糸工場へ向かう工女たちが宿泊した宿屋でした。山本茂実の小説『あゝ野麦峠－ある製糸工女哀史』を彷彿とさせる歴史的背景を持つこの建物は、当時の工女たちの生活を偲ばせる貴重な史料となっています。

製糸業の盛況を伝える旧昭和興業製糸場

大正時代に建てられ、1995年まで使用されていた旧昭和興業製糸場は、座繰製糸工場です。設備・機械類も含めて移築され、動態保存が試みられていましたが、2020年11月現在、ボイラー故障のため実演は中止されています。しかし、当時の製糸の様子を想像できる貴重な遺構です。

その他の施設とアクセス

歴史の里には、これらの建造物以外にも、松本市で少女時代を過ごした川島芳子のゆかりの品を展示する川島芳子記念室があります。川島芳子没後50年にあたる1998年に開設され、彼女の詩集出版や命日追悼会など、様々な活動を行っています。

アクセスは、アルピコ交通上高地線大庭駅から徒歩約15分、または松本駅から松本市地域連携バスを利用して約20分です。隣接する日本浮世絵博物館と合わせて訪れるのもおすすめです。

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