松殿師家

松殿師家の生涯と官歴

松殿師家（まつどの もろいえ）は、平安時代後期に活躍した公卿で、関白・松殿基房の三男として生まれました。彼の官位は正二位と内大臣を務め、摂政としても知られています。その生涯は、当時の政治情勢と深く結びついており、特に義仲との関係や一族の力関係を巡る争いが重要な要素となっています。

経歴

師家の母親は花山院家の出身であり、後白河院や平清盛と密接な関係を持っていました。このため、父基房は彼を三男でありながら正嫡として重要視し、早くから大きな役職に抜擢しました。治承3年（1179年）、わずか8歳で権中納言に任命されると、この恵まれた状況も、家族の運営に影響を与えることとなりました。特に、従兄の近衛基通を上回る地位への昇進は、摂関家の権力構造に波紋を広げました。

基通の父は平清盛の娘との婚姻により摂関家の管理を行っており、師家の出世は清盛の意向に反するものでした。この人事に対する平清盛の反発は、治承三年の政変の引き金となり、基房父子は官職を失い、基房は出家を余儀なくされました。

摂政就任とその後

4年後の寿永2年（1183年）、平家の西走や源義仲の上洛に際し、基房は失地回復を試みます。そこで彼は、娘を義仲の正室に嫁がせて、関係を築くことを決定しました。同年11月には摂政であった基通を解任し、師家を後任の摂政に任命します。彼はこの時、12歳と若くして重要な役職を担いましたが、翌年には義仲の滅亡に伴い再び失脚し、その地位を手放すこととなります。

師家はその後、政治的な活動から離れ、長い間官に復帰することはありませんでしたが、外甥の道元を養子に迎えるなどの努力も試みられました。これらの試みは結局失敗し、彼は名声を取り戻すことはできませんでした。貞永元年（1232年）には出家し、嘉禎4年（1238年）に67歳で死去しました。

官歴

師家の官歴は以下のように推移しました。

• - 治承2年（1178年）

- 4月26日：元服、正五位下に叙される。
- 6月10日：左近衛少将に任命。
- 6月7日：左近衛中将に昇進。
- 12月24日：従四位下に叙。

• - 治承3年（1179年）

- 1月19日：播磨権守に任命。
- 3月11日：正四位下に昇進。
- 10月9日：権中納言に任命。
- 11月17日：解官。

• - 寿永2年（1183年）

- 8月25日：権大納言に任命。
- 11月21日：内大臣及び摂政に任命。

• - 寿永3年（1184年）

- 1月6日：正二位に叙。
- 1月22日：摂政・内大臣を辞退。

• - 貞永元年（1232年）

- 9月6日：出家、法名を大心とする。

• - 嘉禎4年（1238年）

- 10月4日：死去、享年67。

系譜

• - 父：松殿基房
• - 母：忠子（藤原忠雅の娘）
• - 妻：藤原隆房の娘
• - 子：松殿基嗣、松殿実嗣、澄快、承澄、勝尊、澄空、慈弁、覚修、道源、勧誉、房性

松殿師家の生涯は、華やかな栄光と同時に、数々の困難と挫折を伴ったものでした。彼の一連の出来事は、当時の日本の政局を如実に反映しており、後世にわたる歴史の教訓を含んでいます。

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