松江市の歌

松江市の歌

「松江市の歌」（まつえしのうた）は、島根県松江市によって制定された公式の市歌です。この歌は、2005年（平成17年）に八束郡の7町と合併して新たに誕生した現在の松江市としては最初の市歌にあたりますが、それ以前の旧松江市が制定した歌を含めた通算では3代目となります。歌詞は井上久雄氏が、曲は湯川和幸氏が担当しています。

制定以前の歴史

松江市は1889年（明治22年）に市制を施行しました。旧松江市では、歴史の中で複数の市に関連する歌が生まれています。初代の「松江市歌」は1932年（昭和7年）10月1日に制定され、多久和貞太郎氏が作詞、下野米川氏が作曲を手がけました。第二次世界大戦後には、田村重弥氏作詞、下野沢氏作曲による2代目の「松江市歌」が制定されたほか、市制60周年を記念した「松江市民の歌」（作詞：宮田隆、作曲：長岡敏夫）なども作られました。さらに、市民憲章の精神を歌にした「ふるさと松江」（作詞：宮田隆、作曲：山本力）や、1986年（昭和61年）には当時の市長である中村芳二郎氏自身が作詞し、小林昭三氏が作曲した「松江讃歌 いつまでもどこまでも」など、様々な楽曲が存在しました。

しかし、これらの市に関わる歌については、市が編纂した公式な歴史書である『松江市史』には詳しい記載が見当たりません。唯一、1962年（昭和37年）に刊行された『新修松江市誌』の巻末年表に、初代市歌の制定に関する記述が見られるのみで、多くの楽曲に関する公的な記録は限定的でした。

合併と市歌の状況

日本各地で進められた平成の大合併において、旧松江市は2005年（平成17年）に八束郡の7つの町と新設合併を行い、市域が大幅に拡大しました。この合併に際して設立された松江・八束合併協議会では、新しい松江市における市町歌の取り扱いに関する具体的な協議や決定が行われませんでした。そのため、旧松江市が過去に制定・作成した「2代目松江市歌」をはじめとする一連の楽曲群は、新しい市における公式な位置づけが明確ではない状態に置かれ、その存在が曖昧になっていました。

新市歌の誕生

新しい松江市が発足した後も、市歌に関する問題は6年以上にわたって棚上げされた状態が続きました。しかし、2011年（平成23年）に東出雲町を市に編入合併する際の協議において、この状況に進展が見られました。東出雲町の合併に伴い「東出雲町歌」を廃止することと引き換えに、旧松江市時代から数えて3代目となる新しい市歌を制定するという方針が決定されたのです。新市歌の歌詞は、広く一般から公募された作品の中から選ばれた入選作が採用されました。この新市歌が制定された目的としては、2005年の合併で一つになった松江・八束地域全体の市民が一体感を感じ、郷土松江への愛着や誇りを深めることにつながるような歌と位置づけられています。

普及に向けた取り組み

現行の「松江市の歌」は、市民の間での普及にも力が入れられています。特に注目される取り組みとして、2022年（令和4年）には、NHK Eテレの子供向け番組「おかあさんといっしょ」で10代目「体操のお兄さん」として親しまれた佐藤弘道氏が協力しています。松江市役所からの依頼を受けた佐藤氏は、「松江市の歌」をアップテンポにアレンジした楽曲をBGMとして使用したオリジナルのエクササイズを考案・作成し、市民が楽しく歌に親しみながら健康づくりに取り組めるよう、普及活動を展開しています。こうした努力により、「松江市の歌」は新たな時代を迎えた松江市のシンボルとして、市民に歌い継がれることが期待されています。

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