松田弘俊

松田弘俊：実業家から初代公選長岡市長へ

松田弘俊（まつだ ひろとし）は、1896年（明治29年）2月28日に生まれ、1972年（昭和47年）11月17日に没した、昭和期の日本の実業家であり政治家です。彼は、新潟県長岡市を拠点とする電力会社、北越水力電気や、その関連会社である北越電化工業（現在の北越メタル）で要職を歴任した後、1947年（昭和22年）に初代公選長岡市長に選出され、2期8年の間、市政を担いました。

生い立ちと初期のキャリア

松田弘俊は、新潟県中魚沼郡下条村（現在の十日町市）で、水落要松の次男として生を受けました。水落家は代々庄屋を務めた家柄で、父の要松も下条村長や新潟県会議員を歴任しました。1914年（大正3年）に新潟県立加茂農林学校を卒業後、三菱合資会社新潟事務所に勤務しましたが、1918年（大正7年）に長岡市の電力会社である北越水力電気に入社しました。

1919年（大正8年）には、入夫婚姻によって妻の智恵の実家である松田家を継ぎました。妻の父、松田市平は、実業家として活動していたものの、日露戦争で戦死していました。松田は北越水力電気に入社後、カーバイド工場での勤務を経て、1934年（昭和9年）に同社の支配人に任命され、1937年（昭和12年）には取締役兼支配人、翌年には常務取締役へと昇進しました。

戦時下の活動と北越電化工業

太平洋戦争開戦後の1942年（昭和17年）4月、配電統制のために北越水力電気は電気事業を国策会社である東北配電（現在の東北電力の前身）に出資しました。松田は東北配電で短期間、監事を務めました。同年5月には、北越水力電気のカーバイド事業を引き継いで北越電化工業が発足し、松田は同社の常務取締役に就任しました。実質的な経営は松田が担い、事業経験のない山口順太郎（北越水力電気社長の長男）が社長に就任しました。松田は1945年（昭和20年）6月まで北越電化工業の常務を務めました。

初代公選長岡市長としての活躍

その後、松田は電線製造会社を起業しましたが、1947年（昭和22年）に実施された第1回長岡市長選挙に、日本自由党と日本進歩党の推薦を受けて立候補しました。実業界に身を置いていた松田ですが、実父が政界に身を置いていたことや、義父の弟である松田耕平が長岡市長を経験していたことが、政界への転身の背景にあるとされています。選挙では、日本社会党・日本共産党が推す志賀定一をわずか1,000票差で破り、初代の公選長岡市長に就任しました。

市長在任中は、長岡空襲からの復興に尽力し、復興競馬や新潟県産業博覧会などの事業を推進しました。1951年（昭和26年）の第2回市長選では、元衆議院議員の神山栄一を破り再選を果たしました。2期目には、周辺町村の合併を推進しました。しかし、1954年（昭和29年）には市庁舎の建替え・移転問題で市議会と対立し、周辺9村との合併を機に市長を辞任しました。

出直し市長選では、三選を目指したものの、日本社会党の内山由蔵に敗れました。

その後の活動と晩年

実業界では、市長在任中の1950年（昭和25年）11月に長岡鉄道の取締役に就任しました。長岡鉄道が越後交通に合併した後も、引き続き取締役を務めました。1964年（昭和39年）には北越電化工業の取締役を退任しましたが、越後交通の取締役は引き続き務めました。

1972年（昭和47年）11月17日、松田弘俊は肺化膿症のため、長岡中央綜合病院で76歳でその生涯を閉じました。

栄典

松田弘俊の功績を讃え、以下の栄典が授与されました。

1972年（昭和47年）10月24日 - 勲五等双光旭日章
1972年（昭和47年）11月17日 - 正六位・勲三等瑞宝章

松田弘俊は、実業家としてだけでなく、政治家としても長岡の復興に大きく貢献しました。彼の多岐にわたる活動は、今日の長岡市の発展の礎となっています。

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