松田茂樹

松田茂樹氏は、1970年5月25日に東京都に生まれた、日本の家族社会学者です。現在、中京大学現代社会学部の教授として、活発な研究活動と後進の指導にあたっています。

氏の学術的なキャリアは、まず一橋大学社会学部を卒業することから始まりました。その後、慶應義塾大学大学院社会学研究科の博士課程に進学し、単位を取得して退学しています。大学院では、現代社会における家族や子育てに関する研究を深めました。特に、育児を取り巻く社会的ネットワークの構造とそのサポート効果に関する実証的な研究に注力し、その成果をまとめた論文「社会的ネットワークの構造と力 育児におけるネットワークのサポート効果に関する実証的研究」によって、2006年に慶應義塾大学より博士（社会学）の学位を授与されています。この博士論文は、育児期の親がどのような人間関係から支援を得ているのか、そしてそのネットワークが育児の負担軽減や幸福感にどのように影響するかを詳細に分析したものです。

現在の学術的な職に就く前、松田氏は第一生命経済研究所に勤務した経験を持っています。経済分野での実務経験は、その後の社会学研究において、より広範な視点や実社会との繋がりを意識する上で貴重な基盤となったと考えられます。

中京大学現代社会学部へ移って以降、氏は家族社会学の主要な研究者の一人として、多岐にわたるテーマに取り組んでいます。その研究対象は、現代日本が抱える喫緊の課題である少子化問題、子育て中の家庭への育児支援、夫婦関係の変容、学校と家族の相互作用など、現代社会における家族のあり方やその変化に関する広範囲に及んでいます。氏の研究は、実証的なデータ分析に基づき、複雑な社会現象を解明しようとするものです。

学術研究に加え、松田氏は社会的な提言活動や公的な役割も担っています。特に注目されるのは、2023年に設置されたこども家庭庁において、その重要機関であるこども家庭審議会の委員を務めている点です。この役割を通じて、氏は学術的な知見を国の政策形成に直接的に反映させ、こどもや子育てを取り巻く環境改善に向けた貢献を行っています。

松田氏の主な著作としては、育児を支えるネットワークのあり方を分析した『何が育児を支えるのか 中庸なネットワークの強さ』（勁草書房、2008年）があります。また、長年にわたり研究している少子化問題については、『少子化論 なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか』（勁草書房、2013年）と、その後の状況を踏まえた続編である『少子化論 続』（学文社、2021年）を発表しており、この分野における日本の現状と課題、そして必要な政策について深く論じています。

さらに、共編著としても多くの重要な書籍を世に送り出しています。例えば、永井暁子氏との共編著『対等な夫婦は幸せか』（勁草書房、2007年）では、夫婦間のジェンダー平等が関係性に与える影響を考察しています。汐見和恵氏らとの共著『揺らぐ子育て基盤 少子化社会の現状と困難』（勁草書房、2010年）では、現代の子育て環境が直面する困難さを多角的に分析しました。渡辺秀樹氏らとの共編著『勉強と居場所 学校と家族の日韓比較』（勁草書房、2013年）では、教育システムと家族機能に関する日本と韓国の比較研究を行い、両国の社会構造や文化的な違いに起因する差異を明らかにしています。これらの共編著からも、氏の研究テーマの広がりと、国内外の研究者との協力による学際的なアプローチがうかがえます。

松田茂樹氏は、家族社会学の研究を通じて、現代日本社会が直面する少子化や子育て支援といった課題に対し、学術的な根拠に基づいた分析と具体的な提言を行っています。その活動は、変化する家族のあり方の中で、私たちがどのように互いを支え合い、次世代を育てていくべきかを考える上で、多大な示唆を与え続けています。

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