松田辰雄

松田辰雄（まつだ たつお）は、1916年10月8日に大阪府大阪市に生まれ、1955年1月14日に逝去した昭和期の将棋棋士です。神田辰之助九段に師事し、最高位は八段でした。

生涯と棋歴

1932年に入門し、将棋の道を歩み始めました。そして1935年には四段に昇段し、プロ棋士となります。戦後再開された順位戦にはB級から参加。着実に勝ち星を重ね、1947年5月10日には七段に昇段しました。翌1948年4月1日には順位戦で好成績を収め、最高峰のA級へと昇級を果たし、同時に八段へ昇段しました。

名人挑戦者決定戦

松田八段にとって最も特筆すべき活躍は、この1948年の名人戦です。当時の名人挑戦権を巡る戦いは特別ルールで行われました。A級上位3名とB級優勝者の計4名によるパラマス方式のトーナメントで挑戦者が決定されることになったのです。松田八段はA級2位の成績を収め、挑戦者決定戦の出場権を獲得しました。まずB級優勝者の五十嵐豊一八段を退け、次にA級1位の木村義雄十四世名人（当時）との三番勝負に駒を進めました。

名人復帰を目指す木村十四世名人を相手にしたこの三番勝負は、関西出身である松田八段にとってホームともいえる雰囲気の中で行われ、地元の盛大な声援が送られました。熱気あふれる対局で、松田八段は先手番の第1局では居玉の布陣、後手番となった第2局ではかつて「阪田流」として知られた向飛車を採用し、木村十四世名人に挑みました。しかし、残念ながら2連敗に終わり、名人挑戦はなりませんでした。特に第2局については、倉島竹二郎八段の証言によれば、松田八段は40度近い高熱に苦しむほどの体調不良だったとされています。この挑戦者決定戦を勝ち抜いた木村十四世名人は、当時の名人であった塚田正夫九段からタイトルを奪取し、見事名人位に復帰を果たしています。

その後と逝去

しかし、この名人挑戦者決定戦以降、松田八段は病のため対局から遠ざかることとなります。順位戦への復帰を果たすことは叶わず、1955年1月14日、B級1組に在籍したまま、わずか38歳という若さでこの世を去りました。

死後に光

その死から長い時を経た2020年には、石川陽生七段らが中心となり、松田八段の生涯を丹念に記録した同人誌『不撓 -忘れられた棋士、松田辰雄八段の記録-』が発行され、改めてその棋歴と人物像に光が当てられました。

昇段履歴

松田辰雄八段の昇段履歴は以下の通りです。

1932年 入門
1935年 四段
1947年5月10日 七段（順位戦B級在籍中）
1948年4月1日 八段（順位戦A級昇級による）
* 1955年1月14日 逝去

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