倉島竹二郎

倉島 竹二郎（くらしま たけじろう）は、1902年11月9日に生まれ、1986年9月27日にその生涯を終えた、日本の作家および囲碁・将棋観戦記者です。日本文芸家協会会員や棋道懇談会会員を務め、将棋盤側クラブ会長としても活動しました。

京都府京都市で生まれた倉島氏は、父親が郵便局長という家庭で育ちました。兄が一人いました。幼少期には、祇園町にあった弥栄尋常小学校に通い、後の名優となる嵐寛寿郎と同級生でした。京都市立中学校を経て、慶應義塾大学文学部国文科に進学。在学中から文学活動に励み、大学の文芸誌である『三田文学』に自身の作品を発表しました。1929年に慶應義塾大学を卒業しています。

大学卒業後、倉島氏はジャーナリズムの世界に進みました。1935年に東京日日新聞社（現在の毎日新聞社）に入社し、記者として特に囲碁や将棋の観戦記者という専門的な分野を担当するようになりました。しかし、そのキャリアは一度中断されます。1938年に応召し、従軍を経験。1943年には新聞社を退社しています。第二次世界大戦の終結後、作家として独立した道を歩み始めますが、毎日新聞社からの強い要請を受け、再び観戦記者として筆を執ることとなりました。

観戦記者としての倉島氏の功績は大きく、特にその独自のスタイルは後の世代に影響を与えました。本人の述懐によれば、最初に将棋の観戦記を書いたのは1932年のことで、『国民新聞』紙上において大崎熊雄氏の仲介で行われたといいます。この時のペンネームは「棋狂子」でした。それまでの観戦記とは異なり、対局の風景や棋士の息遣いといった現場の情景を詳細に描写する手法を徹底させたのは、倉島氏が最初であるとされています。この臨場感あふれる筆致は多くの読者に支持され、観戦記というジャンルの可能性を広げました。また、テレビの将棋番組にも登場し、NHK杯テレビ将棋トーナメントで聞き手を務めた経験もあります。

さらに、倉島氏は現代でも広く使われているある言葉を生み出した人物としても知られています。それは「宿命のライバル」というフレーズです。これは、将棋史に残る木村義雄と金子金五郎の十番勝負に関する記事を文芸誌『オール読物』に執筆した際に、「宿命の競争者（ライバル）」という表現を用いたのが最初であると、倉島氏自身が記しています。

倉島氏は単に筆を執るだけでなく、自身も相当な棋力の持ち主でした。将棋では六段、囲碁では五段、連珠でも五段、さらに麻雀でも三段という多才ぶりを発揮しました。特に囲碁においては「文壇本因坊」の称号を得ています。1978年に創刊された『将棋クラブ』誌上で企画された『文壇将棋名人戦』では、当時の人気作家であった渡辺淳一、山村正夫、斎藤栄の三氏を相手に、得意の三間飛車戦法で全て破るというエピソードも残っています。没後、その長年の将棋界への貢献が認められ、日本将棋連盟からアマチュア七段を追贈されています。

作家としては、観戦記や棋士に関する著作を中心に、多岐にわたる作品を発表しました。主な著書としては、

• - 『少年通信兵』 （佐藤観次郎共著）
• - 『将棋太平記』
• - 『小説関根名人 勝負に生きる男』
• - 『近世名匠伝 棋界の礎石となった人々』
• - 『将棋名人戦観戦記』
• - 『運命を指す男 勝負師小菅剣之助の生涯』
• - 『近代将棋の名匠たち』
• - 『勝負師群像』
• - 『関根金次郎物語 付・思い出の名勝負』
• - 『勝負師人生』
• - 『観音妙智力』
• - 『昭和将棋風雲録 名棋士名勝負物語』

などがあります。これらの著作を通じて、将棋や囲碁の世界、そしてそこで生きる人々のドラマを多くの読者に伝えました。

倉島竹二郎氏は、観戦記者として新たな表現スタイルを確立し、将棋界に深く貢献すると同時に、作家としてもその才能を発揮しました。その功績は、今なお語り継がれています。

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