松谷秀幸

松谷 秀幸の軌跡

松谷 秀幸（まつたに ひでゆき、1982年10月16日生まれ）は、大阪府大阪市鶴見区出身の競輪選手であり、かつてはプロ野球選手としても活躍していた。その経歴は特異であり、野球の世界を後にして競輪選手として再出発を果たした、いわば二足のわらじを履いた人物である。

野球選手時代

未曾有の一歩を歩んだ松谷は、母子家庭で育ち、金銭的な理由から特待生制度を利用しないと高校進学が困難であった。そのため、地元の名門校を諦め、沖縄県の興南高校へと進学。高校2年の時からエースピッチャーを務め、県大会では準優勝を達成。最速149km/hのストレートと緩急を使ったカーブを武器に、3年時の夏の大会では初戦を完封するなどの実績を残すものの、甲子園出場はならなかった。

社会人野球の日立製作所硬式野球部からもオファーがあったが、2000年のドラフトで東京ヤクルトスワローズから3位指名を受け、プロ入りを決意。高校の後輩である上原厚治郎と同じチームでプレーする機会を得た。

プロ入り当初の2001年、松谷はファームで15試合に登板し、将来のエース候補として期待が寄せられた。しかし、怪我により肘の手術を受けることが続き、特に2003年と2004年はほぼリハビリに費やすこととなった。とはいえ、彼はその悔しさを胸に地道に努力を重ね、2005年には自己最多の34試合に登板。その後も期待されていたが、再び故障が発生し、2011年には戦力外通告を受け、プロ野球選手としての道に終止符を打った。

競輪選手時代

プロ野球界を去った松谷は、千葉中央ヤクルト販売株式会社に就職し、しばらくサラリーマンとして生活を送った。しかし、その生活は自身には合わないと感じ、再びスポーツの世界に戻る決意をした。横浜ベイスターズの投手コーチと親交があったことから、競輪選手の佐々木龍也に弟子入り。2007年には競輪学校に入学し、2008年に見事合格。同期にはアイスホッケーU20の代表選手杉本正隆がいた。

競輪選手となった松谷は、2009年にデビューを果たし、初戦で早速の勝利を収めた。その後、2011年にS級に特別昇級。2013年6月には小田原競輪場で開催された「花月園メモリアル」でGIII優勝を達成し、元プロ野球選手として初のタイトル獲得者となった。この成功は彼の努力が実を結ぶ瞬間であった。

2019年には全GIレースに参加し、特に寬仁親王牌では特選スタート、競輪祭でも好成績を収めた。2021年には再び全てのGIに出場し続け、その年の活動を続けた。そして2024年、第39回読売新聞社杯全日本選抜競輪では準決勝3着を記録し、元プロ野球選手として初のGIレース決勝進出を果たした。

松谷の生涯は、数々の試練を乗り越えた挑戦の連続であった。彼の野球から競輪への転身は、その根底にある努力と情熱の表れであり、今後のさらなる成長にも期待がかかる。

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