板名用水

板名用水について

板名用水は、徳島県阿波市吉野町柿原で吉野川から取水し、同県板野郡板野町へと流れる用水路です。この用水路は、地域農業にとって重要な役割を果たしており、一部は宮川内谷川に、また一部は吉野川に再び合流します。

名称の由来

その名前は、用水路が創設された当時、灌漑地域が板野郡と名西郡にまたがっていたことに由来します。それぞれの郡の頭文字である「板」と「名」を組み合わせて「板名用水」と名付けられました。

歴史

板名用水の歴史は、明治時代にまで遡ります。当時、吉野川左岸の一帯は藍作が盛んでしたが、明治中期には安価な輸入藍や合成染料の登場により、藍の価格が低迷しました。この状況を受け、1904年の日露戦争を機に食糧増産の必要性が高まり、吉野川の豊富な水資源を利用した米作への転換が計画されました。

1904年から計画が始まり、翌1905年には水利組合が設立されました。1906年に工事が開始され、1908年に通水が開始、1912年には支線を含む全工事が完了しました。当時の灌漑面積は約719ヘクタール、総工事費は235万7500円でした。その後も関係面積は拡大し、1980年には914.0ヘクタール、2005年には808ヘクタールの受益面積となっています。

堰堤の建設

用水路完成後も、吉野川の水流の変化や水位の低下、洪水などにより、取水が困難になることが度々ありました。そのため、その都度改良工事が行われてきましたが、1918年の大洪水を契機に、本格的な堰堤の建設が始まりました。この堰堤工事は1919年に一旦完成しましたが、その後も増築工事が行われ、1924年に現在の形となりました。この堰堤は、安定した取水を可能にする上で、非常に重要な役割を果たしています。

現在の板名用水

板名用水は、長年にわたり地域農業を支えてきた重要なインフラです。その歴史は、地域の産業構造の変化や、自然災害との闘いを物語っています。現在も、地域の人々によって維持管理され、その恩恵を受け続けています。

参考資料

上板町史編纂委員会編『上板町史 下巻』1985年
板名用水土地改良区 (外部リンク)

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