林学科

林学科

林学科（りんがっか）は、日本の大学、特に農学部などにかつて設置されていた学科の名称です。今日、この名称の学科はほとんど見られません。これは、かつて林学科を設けていた多くの大学が、学科名を「森林科学科」へと変更したり、あるいは林学系の学科を「生物生産学科」など、より広範な学問分野を含む名称の学科へと統合し、学科数を集約する方向に進んだためです。

歴史的変遷

日本の高等教育機関における林学の歴史は古く、戦前期の大学農学部や農学系学校が「農林学校」として発足した当初から、「農学科」と並んで「林学科」が基本的な柱として学科構成に組み込まれていました。この時期には、農学部の中に単一の学科として設置される例もありましたが、多くの農林系実業専門学校が設立される頃には、農学科、林学科に加え、関連分野の学科を加えた三学科体制が一般的でした。例えば、大正9年（1920年）に開設された九州帝国大学農学部では、当初は農学科のみでしたが、翌年には早くも講座を独立させ、「農芸化学科」と「林学科」を新設し、三学科体制へと移行しています。

戦前期には、林学を専門とする旧制高等教育機関が全国に12校存在し、その内訳は帝国大学に設置された林学科が4校、専門学校に設置された林学科が8校でした。昭和24年（1949年）に新制国立大学が発足した時点では、全国に18の国立大学に林学科が設置されていました。その後、公立農科大学からの移管などもあり、戦後最盛期にはその数は24学科にまで増加しました。

林学の専門分化に伴い、林学の中から化学系の分野が分離独立し、「林産学科」のような新たな学科が誕生する動きも見られました。例えば、学制改革を経て誕生した北海道大学では、旧帝国大学時代の林学科から発展する形で林産学科が設置されました。また、新制九州大学でも林学科から後に林産学科が発足しており、その母体の一部には、戦時中に設置された木材研究所が農学部付属木材研究施設となった経緯があります。

国立大学以外でも、戦後新制大学へ移行した農学部において、公立大学では京都府立大学、私立大学では東京農業大学や日本大学などに林学科が設置されていました。玉川大学のように、農学科の中に林学研究室を置き、演習林を活用して専門教育を行うという形態も見られました。

しかし、社会全体の産業構造の変化に伴い、林業が衰退傾向をたどると同時に、農学分野における林学の相対的な位置づけも低下していきました。このため、戦後の混乱期のごく一部の例外を除いて、日本国内で林学を専門とする新たな高等教育機関や学部が設立されることはなくなりました。1980年代後半になると、大学の農学部全体で組織改革が進められ、林学教育組織も大きな変化を迫られました。この改革の波の中で、「林学科」という名称は、他の多くの旧来の学科名と同様に、次第にその姿を消していくことになります。

特殊な事例

なお、日本の統治外であった時代の琉球大学には、「林学部」が設置されていたという特殊な事例があります。これは4年制課程でしたが、大学の組織構造が日本のものとは異なり、学部がDepartment扱いであったことなどが影響しています。この学部の卒業者には「林学士」という称号が与えられました。

この琉球大学林学部も、大学の組織改組により昭和29年（1954年）には農家政学部に統合され、「林学科」として再編されました。その後、昭和33年（1958年）には農家政工学部へと再編され、昭和47年（1972年）の沖縄日本返還に伴い国立大学となる際には、改めて編成された五つの学部の一つである農学部に属する形となりました。

関連資格

林学科を卒業した者は、関連する資格である「造園施工管理技士」の受験資格を所定の実務年数を経て得ることができます。現在では、「森林科学科」や「生物環境学科」、「農林生産学科」など、名称は変わっても林学に関連する分野を学ぶ学科の卒業者が同様の受験資格を得られる場合がありますが、履修内容の確認が必要となるケースもあります。

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