林市蔵

林市蔵は、1867年（慶応3年）に熊本藩士の家に生まれました。幼くして父を亡くし、苦学の末、帝国大学法科大学政治学科を卒業後、内務省に入省。北海道局への配属を皮切りに、警察監獄学校教授、山口県書記官などを歴任し、官僚としてのキャリアを積みました。

1908年には三重県知事に就任。その後、東洋拓殖株式会社理事を経て、山口県、大阪府の知事を務めました。大阪府知事時代には、現在の民生委員制度の基となる方面委員制度を、小河滋次郎と共に考案・創設し、府に救済課を設置するなど、社会福祉の向上に尽力しました。これらの業績から、彼は「民生委員の父」とも呼ばれています。

1920年に大阪府知事を退任した後は、日本信託銀行頭取、大阪堂島米穀取引所理事長などを歴任し、実業界でもその手腕を発揮しました。また、郷里の熊本県では、九州電力（旧熊本電気）の初代会長として、地域社会の発展にも貢献しました。

林市蔵は、内務官僚として、また銀行家として、日本の近代化に大きく貢献した人物です。特に、方面委員制度の創設は、今日の日本の社会福祉制度の基礎を築いたものとして高く評価されています。彼の功績は、社会福祉、地方行政、経済界など多岐にわたり、その生涯は、日本の近代史において重要な意味を持っています。

また、彼の親族には、外務大臣を務めた重光葵や、内務官僚の堀田健男がいます。彼らの活躍もまた、林市蔵の血筋が日本の社会に与えた影響を物語るものです。

彼の足跡をまとめた伝記として、平瀬努著『民生委員の父林市蔵　亡国の危機を救った「方面精神」の系譜』があります。この書籍は、彼の思想と行動を深く理解するための重要な資料となっています。

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