林廣親

林廣親氏(1953年生まれ)は、日本近代文学、とりわけ戯曲および『スバル』派研究で知られる著名な研究者です。

奈良県に生まれ、1975年に神戸大学文学部を卒業後、東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専門課程に進学、博士課程中退という経歴を持ちます。その後、成蹊大学文学部日本文学科に講師として着任、助教授、教授へと昇進しました。2021年11月時点では、中央大学特任教授と成蹊大学名誉教授の職に就かれています。

林氏の研究は、日本近代文学、特に戯曲の領域に深く貢献しています。その専門性は、木下杢太郎や島村抱月といった近代日本の代表的な作家に関する研究に顕著に表れています。緻密な文献調査と深い洞察に基づいた分析は、高い評価を得ており、多くの研究者や学生に影響を与え続けています。

氏の研究活動は、単なる学術的な論文執筆にとどまりません。数々の著書によって、一般読者にも近代日本の文学作品を理解しやすく解説することで、日本近代文学研究の普及にも大きく貢献しています。

主な著書として挙げられるのは、木下杢太郎の戯曲とその思想を詳細に分析した『木下杢太郎の戯曲とその思想―和泉屋染物店を中心に―』(杢太郎会シリーズ第2号、1986年)があります。同氏の作品の中でも特に重要な作品の一つである『食後の唄』を徹底的に解き明かした『木下杢太郎『食後の唄』を読み解く』(杢太郎会シリーズ第22号、2007年)も、氏の研究成果を象徴する著作の一つです。

さらに、島村抱月をテーマとした共著『島村抱月の世界 ヨーロッパ・文芸協会・芸術座』(井上理恵、五十殿利治、岩井眞實、林廣親、安宅りさ子、永田靖共著、2021年、社会評論社)も重要な業績です。この著作においては、島村抱月の生涯や作品、そして当時の文芸運動との関わりについて、複数の研究者との共同作業を通して多角的な視点から分析されています。

林廣親氏の研究は、単に過去の文学作品を分析するにとどまらず、現代社会に生きる私たちにとって、近代日本の文学が持つ意味や価値を再考するきっかけを与えてくれます。その多角的で深遠な研究は、今後ますます日本近代文学研究に貢献していくものと期待されています。氏の今後の研究活動にも注目が集まります。

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