五十殿利治

五十殿利治：20世紀美術を彩る研究者

五十殿利治氏は、1951年生まれの日本の美術史学者であり、筑波大学名誉教授・特命教授です。その専門は20世紀初頭の近代美術史、特にロシア・アヴァンギャルドと大正期新興美術運動に深く精通しています。長年にわたる研究活動と教育活動は、日本の美術史研究に多大なる貢献を果たしています。

学究の軌跡：研究と教育

東京都出身の五十殿氏は、早稲田大学第一文学部美術史学科を卒業後、同大学大学院に進学。1978年から1985年にかけては北海道立近代美術館で学芸員として活躍し、美術品の調査や展示企画に携わりました。その後、筑波大学に転じ、専任講師、助教授、教授と昇進。人間総合科学研究科芸術学専攻長、同研究科副研究科長・研究科長、芸術系長・執行役員を歴任するなど、大学運営にも大きく貢献しました。2017年に筑波大学を定年退職後も、特命教授として研究活動を続けています。

氏の研究の深さは、1994年に筑波大学に提出した博士論文『大正期新興美術運動の研究』に象徴的に表れています。この論文は、後に書籍として出版され、1995年には毎日出版文化賞奨励賞を受賞しました。さらに2017年には、『非常時のモダニズム―1930年代帝国日本の美術』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞し、その研究の質の高さを示しました。1996年から1997年にかけては、アメリカ合衆国のアイオワ大学オーバーマン高等研究所に在外研究員として滞在し、国際的な視野も養いました。

展覧会企画：美術史を社会へ

五十殿氏は、研究活動のみならず、数々の展覧会企画にも参画し、美術史研究の成果を広く社会に発信してきました。代表的な企画として、2002年に開催された『極東ロシアのモダニズム1918-1928』展が挙げられます。この展覧会は、町田市立国際版画美術館、宇都宮美術館、北海道立函館美術館を巡回し、多くの観客を魅了しました。

著作・翻訳：多岐にわたる活動

五十殿氏は、研究成果を書籍や翻訳として多数発表しています。主な著書として、『大正期新興美術運動の研究』『日本のアヴァンギャルド芸術<マヴォ>とその時代』『観衆の成立―美術展・美術雑誌・美術史』『非常時のモダニズム―1930年代帝国日本の美術』などがあり、いずれも美術史研究に重要な貢献を果たしています。また、ロシア・アヴァンギャルドに関する多くの翻訳書も手がけており、日本の美術史研究に国際的な視点を取り入れる役割も果たしています。

まとめ：美術史への貢献

五十殿利治氏の研究活動は、ロシア・アヴァンギャルドや大正期新興美術運動に関する知見を深めるだけでなく、美術史研究の方法論や美術史における観衆の位置づけなど、多角的な視点からの考察を提供しています。その業績は、日本の美術史研究に大きな足跡を残しており、今後の研究発展にも大きな影響を与えるものと期待されています。氏の今後の活躍に期待が高まります。

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