林弥栄

林弥栄（はやし やさか）

日本の植物学に貢献した樹木学者

林弥栄は、1911年1月29日に愛知県で生まれ、1991年4月23日に生涯を閉じました。彼は、日本の植物学者として、特に樹木学の分野で多大な功績を残しました。東京農業大学教授として後進の指導にあたる傍ら、理学博士の学位も取得しています。

植物研究の道へ

東京高等造園学校園芸学科を卒業後、農林水産省・林野庁に35年間勤務し、その間、日本全国の植物を調査研究しました。農林水産省林業試験場浅川実験林林長などの要職を歴任し、日本の植物に関する深い知識と経験を培いました。その後、東京農業大学造園科学科教授に転じ、教育者としても活躍しました。1982年には、ゼミのOBとともに「日本造園植物研究会」を発足させ、植物研究の発展に尽力しました。

受賞歴と業績

林弥栄の業績は、日本林学賞や昭和60年度第4回日本造園学会上原敬二賞など、数々の賞によって高く評価されています。彼の研究は、植物分類学の進展に大きく貢献し、その成果は多くの著書を通じて広く社会に共有されました。植物の学名命名者を示す際、Hayashiは林弥栄を示す略記として用いられています。

主要な著書

林弥栄は、単著、共著、編著を合わせて多数の著書を出版しました。以下に主なものを挙げます。

『日本産針葉樹の分類と分布』（農林出版、1960年）
『有用樹木図説 : 林木編』（誠文堂新光社、1969年）
『日本の花木』（講談社、1971年）
『花木栽培の基礎知識』（全国林業改良普及協会、1972年）
『日本のサクラ』（誠文堂新光社、1974年）
『さくら百花』（平凡社、1975年）
『原色花木』（家の光協会、1978年）
『サクラ100選』（ニュー・サイエンス社、1980年）
『サクラ』（講談社、1981年）
『日本の野草』（山と溪谷社、1983年）
『日本の樹木』（山と溪谷社、1985年）

これらの著書は、専門家だけでなく一般の植物愛好家にも広く読まれ、日本の植物に関する知識の普及に大きく貢献しました。特に図鑑形式の著書は、美しい写真とともに植物の特徴を分かりやすく解説しており、植物観察の入門書としても高く評価されています。

監修した図鑑

林弥栄は、数多くの図鑑の監修も手がけました。以下に代表的なものを挙げます。

『街路樹実務ガイド』（日本林業技術協会、1973年）
『樹木・果実』（学習研究社、1979年）
『原色園芸植物大圖鑑』（北隆館、1984年）
『樹木たちの歳時記』（講談社、1984年）
『原色樹木大圖鑑』（北隆館、1985年）
『原色世界植物大圖鑑』（北隆館、1986年）
『原色高山植物大圖鑑』（北隆館、1987年）
『夏の山野草と樹木550種』（講談社、1987年）
『秋の山野草と樹木505種』（講談社、1987年）
『野に咲く花』（山と溪谷社、1989年）
『樹木 見分けのポイント図鑑』（講談社、2003年）
『野草 見分けのポイント図鑑』（講談社、2003年）

これらの図鑑は、植物の識別や知識を深める上で貴重な資料となっており、植物研究者だけでなく、自然を愛する多くの人々に利用されています。

参考文献

「林弥栄氏に聞く (〔第4回〕上原敬二賞受賞者に聞く」『造園雑誌』第50巻4号、日本造園学会、1987年、pp.293 - 295
* 『樹木と共に五十年 : 林弥栄先生古稀記念論文・業績集』林弥栄先生の古稀を祝う会、1981年

林弥栄は、日本の植物学、特に樹木学の発展に大きく貢献した偉大な学者であり、その功績は、後世に長く語り継がれるでしょう。

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