林彪事件

林彪事件

林彪事件（りんぴょうじけん）は1971年に発生し、中国共産党副主席である林彪による毛沢東の暗殺未遂事件及びクーデター未遂事件です。この事件は「9・13事件」とも呼ばれ、歴史的に重要な意味を持っています。

経緯と背景

林彪は中国の歴史において重要な戦士として知られ、国共内戦や日中戦争で多くの功績を上げました。1949年に中華人民共和国が成立した後、彼は中国共産党の中心的な地位を占め、毛沢東を後継者として認められました。しかし、権力が増すにつれて、林彪は毛沢東との関係が複雑化します。

文化大革命の始まりとともに、彼は党内の権力闘争に巻き込まれ、毛沢東の指導に対する疑念が生じました。特に国家主席の地位を廃止する提案に同意しなかったことが、毛沢東の警戒を招くきっかけとなります。また、対外政策においても意見の相違が生じ、特にアメリカに対するスタンスの違いが両者の間で摩擦を生む原因となりました。

暗殺計画の発動

1971年になると、林彪とその側近たちは毛沢東を爆殺する計画を練り始めました。この計画は「五七一工程紀要」と称され、毛沢東の視察中に爆破を試みるもので、一旦成功すれば新政権を樹立することを目指しました。計画の策定には林彪の息子である林立果が重要な役割を果たし、家族間にも疑念と緊張が漂っていました。

しかし、計画は事前に漏れ、毛沢東は事態に対応しました。暗殺の日、林彪とその支持者は行動に出ますが、毛沢東側の警戒が功を奏し、爆破は未然に防がれました。この失敗により、林彪にとっての撤退路が完全に閉ざされたのです。

逃亡と墜落

毛沢東に対する暗殺が失敗した後、林彪は逃亡を決意し、北戴河から航空機を使用しての脱出を図ります。9月13日早朝、彼はイギリス製のトライデント機に乗り込み、ソビエト連邦へ向けて飛び立ちました。しかし、操縦ミスと他の要因によって、不時着を試みたものの失敗し、モンゴルの領土内で墜落しました。この墜落により、林彪を含む乗客全員が命を落としました。

モンゴル政府はこの墜落を領空侵犯として非難し、事件は国際的な注目を集めることとなります。後に、ソ連のKGBが墜落現場を調査し、遺体の一部が林彪であったことを確認しました。

事件の影響

この事件は文化大革命の中での権力闘争の一環として、中央政府内に多大な影響を及ぼしました。事件後、中国共産党は林彪を反革命的な存在とし、その行動を厳しく批判しました。ただし、事件に関する詳しい情報は通常のメディアには報じられず、国際的には多くの憶測が飛び交いました。

また、林彪事件に関する報道は長い間統制され、その後の中国の政治的風潮にも影を落としました。事件から約10ヶ月後には公式に林彪の行為を批判し、中国共産党の中での扱いも大きく変わりました。

この事件は、毛沢東の権力の確立と同時に、他の共産党内の権力闘争を象徴する出来事として記憶されています。それは単なる暗殺未遂や逃亡の物語ではなく、中国における権力の流動性や政治的な危機を如実に示す歴史的事件であると言えるでしょう。

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