林檎の樹

林檎の樹

『林檎の樹』（原題: The Apple Tree）は、イギリスの著名な作家であり、ノーベル文学賞を受賞したジョン・ゴールズワージーによって1916年に発表された中編小説です。身分違いの若い男女の出会いと別れ、そしてその後の悲劇的な結末を描き、階級社会の厳しさや青春の感傷、そして選択とその代償といったテーマを深く掘り下げています。

あらすじ

物語は、銀婚式という記念すべき日を迎えたフランク・アシャースト夫妻が、かつてフランクが青春の一時期を過ごした場所を訪れる場面から始まります。その思い出の地で、初老となったフランクは、およそ26年前に経験した出来事を鮮明に回想します。

回想は、フランクが大学を卒業したばかりの5月に遡ります。フランクは友人ロバート・ガートンとともに徒歩旅行をしており、道中で立ち寄ったナラコウム夫人の家で一夜の宿を借りることにします。そこで彼は、ナラコウム夫人の姪であるミーガン・デイヴィットと出会います。ミーガンは、その身なりこそ地味で素朴でしたが、誰もが息をのむほどの美しい容姿の持ち主でした。フランクはミーガンを一目見た瞬間から彼女に強く惹きつけられます。

翌日、フランクはフットボールで負った膝の古傷が悪化してしまい、旅を続けることが困難となります。ガートンは一人でロンドンへと向かい、フランクはしばらくナラコウム夫人の家に滞在せざるを得なくなります。共に過ごす時間の中で、フランクのミーガンへの想いは募る一方、ミーガンもまた純粋な心でフランクを愛し始めます。しかし、異なる身分を持つ二人の親密な関係は、周囲の人々の間から不快感や反対の声を生むことになります。

状況を打開しようと考えたフランクは、ミーガンと共に家を出て、新しい生活を始めることを提案します。その計画を実行に移すための準備として、彼は一人でトーキーの町へ向かいます。

トーキーに到着したフランクは、偶然にも大学時代の友人であるフィル・ハリデイと再会します。ハリデイの家へ招かれたフランクは、そこでフィルの姉妹たち、サビナ、フリーダ、そしてステラを紹介されます。都会的で洗練されたハリデイ一家との交流は、フランクの世界観に変化をもたらします。予定していたミーガンのもとへの帰宅は延期となり、フランクはナラコウム夫人に電報で知らせるに留まります。その夜、フランクはハリデイの妹の一人、ステラに強く心が惹かれていることに気づき、ミーガンとの約束との間で激しい葛藤に苛まれます。

その後もフランクはハリデイ一家との時間を過ごし、ある日、彼らとピクニックに出かける途中で、偶然にも歩いているミーガンの姿を目撃します。一瞬動揺したフランクは馬車を降りて彼女の後を追おうとしますが、結局思いとどまります。ハリデイ家の人々と触れ合うにつれて、フランクは次第にミーガンとの結婚が現実的ではないことを強く感じるようになっていたのです。

それから3日後、フランクはハリデイ一家と共にロンドンへ帰ります。ナラコウム夫人の農場には結局、一度も連絡を取ることはありませんでした。そして、翌年の4月末には、フランクはステラと結婚します。

このように、過ぎ去った日々に思いを巡らせていたフランクは、かつて滞在したナラコウム夫人の農場を再び訪れたいという衝動に駆られ、その場所へ向かいます。農場は26年前とほとんど変わらない佇まいでした。そこでフランクは、当時顔見知りだった農夫のジムと再会し、彼からフランクが去った後のミーガンについて衝撃的な話を聞くことになります。ジムが語ったのは、フランクに置き去りにされたミーガンが深い悲しみにとらわれ、やがて自らの命を絶ってしまったという悲劇的な最期でした。

翻案・関連作品

本作は後に『サマーストーリー』というタイトルで映画化されています。
また、日本のテレビアニメ『キミキス pure rouge』では、登場人物の一人であるヒロイン星乃結美が本作を愛読しており、作中で他の人物に薦める場面が描かれています。

日本語訳

日本語訳としては、法村里絵による翻訳が新潮文庫から2018年に刊行されています。

ISBN 978-4-10-208803-6

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