林泉寺 (米沢市)

林泉寺（りんせんじ）

山形県米沢市に位置する、曹洞宗の寺院です。山号を春日山（かすがさん）と称し、かつてこの地を治めた米沢藩上杉家、そしてその重臣として知られる直江兼続、両者の菩提寺として深い歴史を刻んでいます。江戸時代初期、上杉家が越後国から米沢へ移封された際に、新たな本拠地である米沢城下に建立されました。

歴史

林泉寺の起源は、上杉家の旧本拠地である越後国（現在の新潟県上越市）の春日山城山麓にあった同名の林泉寺に遡ります。この越後の林泉寺は、上杉家の前身である長尾氏の時代に建立されたもので、現在も新潟県上越市に存在しています。

関ヶ原の戦いの後、上杉家が米沢へ移ることになった際、上杉景勝公の生母であり、上杉謙信公の姉にあたる仙洞院殿（仙桃院殿とも）が、元和3年（1617年）に越後林泉寺の14世である万安大悦禅師を招き、米沢の地に同名の寺院を建立したのが、現在の米沢林泉寺の始まりとされています。

上杉家の米沢移封に際しては、上杉謙信公の遺骸をはじめ、上杉家ゆかりの多くの文書や貴重な品々も共に移されました。林泉寺もまた、この移転に付き従ったものと考えられています。慶長17年（1612年）には、謙信公の遺骸は米沢城本丸内に設けられたお堂に安置され、城内にあった真言宗の二十一か寺によって守護されることになったため、林泉寺が直接謙信公の廟所となることはありませんでした。しかし、藩主上杉家代々の菩提寺として、林泉寺は引き続き厚い尊崇を受けました。

歴代藩主の墓所は別に造営された廟所にあるため、林泉寺の境内にはありませんが、藩主の正室や子女の墓が安置され、上杉家にとって重要な位置を占めていました。このことから、林泉寺は米沢藩内において大きな影響力を持ち、寛文4年（1664年）には、当時米沢藩を構成していた置賜、信夫、伊達の三郡における曹洞宗の僧録に任命されました。僧録は本来、曹洞宗の寺院を統制する役職でしたが、実際には藩内の全ての宗派や寺院に対して強い影響力を行使できたと言われています。

寛永14年（1637年）には、絶家となっていた重臣・直江氏の菩提寺であった徳昌寺と、僧録の地位を巡る争いが起こりました。この争いの結果、徳昌寺は廃寺となり、住職は越後時代の旧所在地である与板（現在の新潟県長岡市）へ追放されました。徳昌寺の寺領は林泉寺に併合され、米沢藩の決定により、徳昌寺にあった直江兼続公とお船の方様の墓も林泉寺が管理することになりました。これにより、林泉寺は兼続公夫妻の墓を境内に改葬し、名実ともに直江兼続公の菩提寺となったのです。

正徳元年（1711年）には、越後の春日山城跡地にあった春日社を寺内に移し、「明神堂」として建立しています。また、現在でも林泉寺の庭園は「米沢三名園」の一つに数えられるほど見事な景観を保っています。

伽藍の整備は、越後林泉寺の古くからのしきたりに従い、元和5年（1619年）に完了しました。享保17年（1732年）には火災により伽藍の大半が焼失しましたが、その後、元文5年（1740年）に再建され、現在に至っています。

現在の林泉寺境内には、上杉景勝公の生母である仙桃院殿、武田信玄公の娘で景勝公の正室であった菊姫様をはじめとする上杉家歴代当主の奥方、菊姫様の弟にあたり上杉家に仕えた武田信清様など、上杉家の子女や縁者の墓所があります。また、分家にあたる米沢新田藩の歴代藩主や、多くの米沢藩重臣たちの墓石も静かに並んでいます。特に、直江兼続公とお船の方様の墓所は、林泉寺が兼続公の菩提寺となった経緯を示す重要な場所として知られています。上杉治憲公（鷹山公）の側室であったお豊の方様の墓も林泉寺境内に設けられています。

境内

山門をくぐると、正面に風格ある本堂が現れます。本堂内部と宝物館は有料（300円）で拝観することができます。本堂の裏手には美しい庭園が広がり、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。山門から見て左側には広大な墓地があり、多くの歴史的人物が眠っています。右側には参拝者のための駐車場と御手洗が整備されています。

境内には、前述の仙桃院殿、菊姫様をはじめとする藩主夫人の方々の他、直江兼続公とお船の方様、武田信清様一族の墓所があります。その他にも、上杉景広公の子孫とされる長尾権四郎様一族や能登畠山氏一族、水原親憲様、甘粕景継様、吉江宗信様一族、黒金泰忠様、秋山源蔵様（上杉謙信公の股肱の臣と伝えられる）など、米沢藩を支えた数多くの藩士や関係者の墓が建立されています。また、洋学舎で英語教師を務めた滝川喜六様や、私塾を開いた松木魯堂様といった、近代における米沢の教育・文化に関わった人物の墓も見られます。

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