僧録

僧録（そうろく）とは

僧録とは、仏教における僧侶の登録や、寺院の住持（住職）の任免といった人事に関する事務を統括した役職のことです。中国と日本において、それぞれの歴史的な背景の中で、僧録がどのように設置され、機能してきたのかを詳しく見ていきましょう。

中国における僧録

中国では、唐の時代、元和年間に僧録が設置されたのが始まりとされています。初代の僧録には端甫法師が任命されました。その後、開成年間には、左右街僧録という役職が設けられ、僧侶の管理体制が整えられました。

日本における僧録

鹿苑僧録（ろくおんそうろく）

日本では、建武3年（1336年）に足利尊氏によって禅律方（ぜんりつがた）が設置されたのが、僧録の始まりとされています。禅律方は、禅宗（臨済宗と曹洞宗）と律宗（真言律宗を含む）を統括する役割を担いました。初期の禅律方には、細川和氏、藤原有範、六角氏頼、赤松則祐などが任命されています。

その後、禅律方は室町幕府の正式な機関となり、僧録司（そうろくし）と呼ばれるようになりました。1379年には、春屋妙葩（しゅんおくみょうは）が初代の僧録司に任じられました。1398年には、絶海中津（ぜっかいちゅうしん）が僧録司に任じられ、当時、彼が院主を務めていた相国寺の塔頭寺院である鹿苑院の院主が、以後僧録司を兼務するようになりました。これが鹿苑僧録と呼ばれる所以です。

鹿苑僧録は、臨済宗における事実上の最高機関として、五山以下の諸寺を統括しました。寺格の決定、住持の任免、所領や訴訟に関する処理など、寺院運営に関する重要な役割を担っていました。しかし、時代が下るにつれて、僧録司は名誉職化し、皇族などが任命されるようになりました。実務は、僧録司と幕府の連絡役であった蔭涼職（いんりょうしき）が担当するようになり、蔭涼職が実質的な責任者として台頭しました。特に、8代将軍足利義政の側近であった季瓊真蘂（きけいしんずい）は、蔭涼職として知られています。また、15代将軍足利義昭が織田信長によって追放された後も、蔭涼職は義昭の影響下に置かれていたようで、天正12年（1584年）には、当時の蔭涼職であった清叔寿泉（せいしゅくじゅせん）が義昭の使者として島津義久の元へ赴いた記録が残っています。

金地僧録（こんちそうろく）

江戸時代に入り、元和元年（1615年）に江戸幕府によって寺院諸法度が制定されると、僧録司と蔭涼職は一旦廃止されました。しかし、1619年には、以心崇伝（いしんすうでん）が僧録に任命され、以後、南禅寺金地院の住持が僧録を兼務するようになり、金地僧録と呼ばれるようになりました。

なお、曹洞宗の関三刹のように、臨済宗以外の宗派にも僧録が置かれた例があります。

歴代僧録司（主な人物）

鹿苑僧録

春屋妙葩
絶海中津

金地僧録

以心崇伝

脚注

関連項目

五山
相国寺
* 南禅寺金地院

もう一度検索