林錦

林錦（りん きん）

林錦は、明代に活躍した官僚であり軍人です。生没年は不明で、字（あざな）は彦章（げんしょう）と称しました。福州府連江県を本貫とします。

生涯

景泰年間初め、林錦は郷貢（科挙の地方試験）に合格し、合浦県訓導（地方の学校の教官）に任じられました。当時、瑶族による反乱が頻発しており、林錦はそれに対する有効な対策を次々と提案しました。その能力を認められ、両広巡撫（広東・広西地域の行政長官）であった葉盛（ようせい）に見出され、霊山県（現在の広西チワン族自治区欽州市霊山県）の事務を代行することになりました。

霊山県城は反乱軍によって破壊されていたため、林錦は土地の地形を綿密に調査し、防御のための柵を設置し、兵器を配備しました。その後、林錦が一時的に県務を離れることになると、霊山県の住民たちは、反乱軍の再来を恐れて山中に逃げ込みました。葉盛はこの状況を朝廷に報告し、林錦は正式に霊山知県（知県は県知事）に任命されました。林錦が知県として着任すると、住民たちは安心して山から戻ってきました。

その後、飢饉が発生し、瑶族たちは食料を求めて略奪を繰り返すようになりました。林錦は単身で瑶族の砦を訪れ、彼らに利害を説き、和平を呼びかけました。その結果、霊山県を管轄する25の瑶族部族が林錦に従うことになりました。しかし、なおも抵抗を続ける者に対しては、軍を率いて討伐しました。

1462年（天順6年）、羅禾水（らかすい）で反乱軍を打ち破り、さらに黄姜嶺（こうきょうれい）、新荘（しんそう）でも連戦連勝し、1000人以上の反乱軍を捕え、または斬首しました。捕虜となっていた人々を故郷に帰し、管轄内の反乱を完全に鎮圧しました。その後、防御のために設置していた柵を撤去し、代わりに強固な土城を築きました。

葉盛と監司（地方監察官）は、林錦の功績を繰り返し朝廷に推薦しました。1465年（成化元年）、廉州府（現在の広西チワン族自治区合浦県）が反乱軍に占拠されたため、林錦は廉州知府（府知事）として試用されることになりました。廉州府でも再び飢饉が発生し、反乱軍が各地で略奪を繰り返す中、林錦は1000人以上の反乱軍を説得して解散させ、説得に応じない者たちを鎮圧しました。

1468年（成化4年）、林錦は広東按察僉事（広東省の監察官）に転任し、後に広東按察司副使（監察副長官）に昇進しました。反乱への警戒を怠らず、団河営（だんがえい）を西に、新寮営（しんりょうえい）を南に設置し、さらに反乱軍の侵入経路を塞ぐために洪崖営（こうがいえい）を設けました。また、霊山県の土城をさらに強固なものとするため、500丈（約1.5キロメートル）に及ぶ高い城壁を築き、堅牢な県城としました。

1478年（成化14年）、兵部（国防省）が林錦の反乱鎮圧の功績を朝廷に報告すると、林錦は朝廷から褒賞を受けました。

林錦は軍事面での活躍だけでなく、儒教的な教化にも力を注ぎました。霊山県には幽鬼を崇拝する習慣がありましたが、林錦は淫祠（いんし：みだらな神社）を禁止し、学校を修繕し、農業や養蚕を奨励しました。また、廉州府や欽州府（現在の広西チワン族自治区欽州市）を統治していた際には、学宮を整備し、文教を振興しました。

林錦は誠実な人柄で、他人の本質を見抜く洞察力を持っており、瑶族からの信頼も厚かったです。また、軍にあっては、兵士たちと苦楽を共にし、功績のあった者を積極的に推薦しました。

脚注

* 『明史』巻165 列伝第53

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