枚方市歌

枚方市歌

「枚方市歌」（ひらかたしか）は、大阪府枚方市によって制定された公式の市歌です。作詞は辰己利郎、作曲は高木和夫による作品として知られています。

この市歌は、1947年（昭和22年）8月1日に枚方市が市制を施行したことを記念して制作されました。市制施行を祝う機運の中で、歌詞は広く一般から懸賞という形で募集されました。その後、歌詞の入選作が決定し、楽曲が完成。同年10月30日には、市章と市歌の制定に関する議案が枚方市議会に提出され、即日可決されるという運びで正式に定められました。

歌詞を手がけた辰己利郎氏は、奈良県在住の作詞家です。彼は枚方市歌の完成とほぼ同時期に、地元の奈良県斑鳩町の町歌も作詞しています。他にも、郵政省が制定した「幸を呼ぶ郵政」をはじめ、愛知県豊橋市の「豊橋市歌」、岐阜県高山市の「高山市の歌」など、全国各地の様々な自治体や団体歌の作詞を手がけています。

一方、作曲を担当した高木和夫氏は、宝塚音楽学校で教鞭を執っていた人物です。彼は枚方市歌を完成させた約12年後には、隣接する寝屋川市の市歌も作曲しており、大阪府北河内地域における自治体歌の作曲に深く関わっています。

市歌の歌詞に目を向けると、枚方市の地理的特徴や歴史的な背景が織り込まれています。特に第2番では、大阪市と京都市という二つの大都市の中間に位置するという、枚方市の地勢が強調されており、この表現は同時期に制定された高槻市の市歌にも共通して見られる特徴です。また、第1番では、戦国時代末期の文禄年間にこの地に御茶屋御殿を築かせたという由縁から、豊臣秀吉（太閤）が歴史上の人物として歌い込まれています。

現在の枚方市役所によると、この市歌は主に年始式や公立学校の卒業式といった市の比較的改まった公式行事で歌われているとのことです。しかし、市民の間での一般的な浸透度については、必ずしも高いとは言えない状況が続いています。かつて1980年代には、成人式の参加者に対して市歌のレコードが配布された時期もありましたが、広く市民に「ポピュラー」な存在としては認識されず、「枚方音頭」の方がより親しまれている存在であるとされています。

枚方市に関連する楽曲としては、市歌の他にもいくつかの作品が存在します。例えば、枚方市の市制35周年を記念して1983年（昭和58年）に制作された「枚方賛歌」（作詞：足立十郎、作曲・編曲：奥村貢）があります。また、2019年（令和元年）に発表された市テーマソング「この街が好き」（作詞：上田和寛、作曲・編曲：杉山勝彦）は、日本経済新聞社が主催する「NIKKEI全国社歌コンテスト」において、2023年（令和5年）に最優秀賞を受賞するなど、比較的新しい楽曲として注目を集めています。

枚方市歌は、市の歴史や地理を歌い込み、公式行事でその存在感を示す一方で、市民生活の中での馴染みという点では他の楽曲に譲る面もあるようです。しかし、市制施行という歴史的な節目に生まれ、市のシンボルの一つとして今も大切に歌い継がれています。

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