果心居士

果心居士の謎と幻術

果心居士（かしんこじ）は、室町時代末期に現れた幻術師として知られています。生没年は不明ですが、彼は七宝行者としても知られ、多くの歴史的な人物たちの前で幻術を披露したと伝えられています。その一方で、彼の実在を疑う声もあります。

人物像

彼に関する記録は、安土桃山時代の愚軒による雑話集『義残後覚』に見られます。筑後で生まれたとされ、興福寺で僧籍にあった果心居士は、幻術の修行によって破門されたと言われています。後に織田信長の家臣になることを望んだ彼は、信長に幻術を披露し称賛されましたが、仕官の許可は得られなかったようです。

また、江戸時代の柏崎永以の随筆『古老茶話』には、慶長17年（1612年）に因心居士が徳川家康の前に現れた記録があり、家康が88歳だと答えたエピソードが伝えられています。豊臣秀吉からは、その存在を脅威と感じられ、殺害されたとの説もあるなど、彼の生涯には謎と恐怖が伴っています。

幻術の内容

果心居士が披露した幻術には、数々の驚くべきエピソードがあります。ある時、彼は猿沢池の水面に笹の葉を投げ入れると、その葉が魚に変わり泳ぎ出したと言われています。また、ある男に楊枝で歯をつつくと、その歯が抜け落ちそうになる瞬間を見せつけたとも伝えられています。

特に松永久秀とは親交があり、彼が戦場を生き延びてきたことを証明しようと挑んだ際には、久秀の亡き妻の幻影を現して驚愕させました。さらに、秀吉に呼ばれた際、果心居士は秀吉の秘密を暴露し、捕らえられて磔にされる運命となりますが、彼は鼠に姿を変えて逃げたり、他の伝説的な出来事にも関与していたと記されています。

果心居士は、地獄を描いた美しい絵を持っており、この絵を前に説法をして群衆からの喜捨で生活していました。信長がその絵を欲しがりましたが、彼は断ったため、信長の家臣によって命を奪われる結果となります。しかし、信長がその絵を広げると、一瞬で白紙になってしまったという逸話も残っています。

幻影の再訪

その後、果心居士は再び絵を見せるという噂が広がり、信長の前に呼ばれた彼は、「正当な代金を支払っていただければ、絵は元に戻る」と告げました。信長が百両を支払うと、白紙の画面に再び絵が現れるという神秘的な出来事が起きました。

明智光秀も果心居士の名を聞き、彼を自宅に招き酒を振る舞いましたが、酔った光秀は屏風の中の舟を手招きしました。すると、水があふれ出し、果心居士はその舟で屏風の世界に戻っていき、以後日本には姿を現さなかったと言います。

果心居士の希望と恐怖に満ちた伝説は、彼がいかにして周囲の人々を魅了し続けたのかを物語っています。彼の幻術は単なる幻想を超え、時代を超えて語り継がれています。

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