柏女霊峰

概要

柏女 霊峰（かしわめ れいほう、1952年6月16日 - ）氏は、日本の教育心理学および児童福祉学の分野で重要な貢献を果たしてきた研究者・教育者であり、淑徳大学の教授を務めています。その活動は学術研究に留まらず、臨床心理士として、また行政機関や公的な審議会の委員としても多岐にわたり、日本の児童福祉制度や実践の発展に深く関与しています。浄土真宗の僧侶という顔も持ち合わせており、多様な視点から子どもと家庭、そして社会のあり方を探求し続けています。

経歴

柏女氏は1952年に福岡県で生まれました。東京大学教育学部教育心理学科で学び、1976年に同大学を卒業しました。卒業後、千葉県児童相談所の心理判定員として現場での実務経験を積みました。この経験は、その後の研究活動や政策提言の基盤となっています。

1986年には厚生省（現・厚生労働省）に入省し、児童家庭局企画課に勤務しました。その後、1991年には児童福祉専門官に就任し、国の中枢で児童福祉行政に携わりました。行政官としての経験を通じて、日本の児童福祉が抱える構造的な課題や政策決定のプロセスについて深い知見を得ました。

1994年、教育・研究の世界に転じ、淑徳大学社会学部の助教授に就任しました。そして1997年には同大学総合福祉学部の教授に昇任し、以来、教育者として後進の指導にあたるとともに、研究者として精力的に活動を展開しています。

研究・活動

淑徳大学教授としての活動に加え、柏女氏は日本の児童福祉・子ども家庭支援分野における中心的な役割を担ってきました。日本子ども家庭総合研究所において子ども家庭政策研究担当部長を務めるなど、専門的な視点から政策研究を推進しました。

また、社会保障審議会の臨時委員として、特に社会的養護専門委員会の委員長を務めるなど、国の社会福祉政策、特に児童福祉に関する重要な決定プロセスに専門家として深く関与しています。東京都児童福祉審議会の専門部会長や、石川県顧問、浦安市専門委員といった地方自治体レベルでの役職も歴任しており、国の政策から地域の実践に至るまで、幅広い領域でその専門知識と経験を活かしてきました。

その研究は、教育心理学の知見をベースに、児童虐待、子育て支援、社会的養護、保育など、現代社会における子どもと家庭を取り巻く喫緊の課題に焦点を当てています。実務家、行政官、研究者、教育者という多様な立場を経験しているため、理論と実践を結びつけた提言や研究成果は、多くの関係者から高い評価を得ています。

著書・編著

柏女霊峰氏は、児童福祉・子ども家庭福祉分野における多数の著作を発表しています。単著としては、『現代児童福祉論』、『児童福祉改革と実施体制』、『子ども家庭福祉論』など、この分野の基本となる著作を世に送り出しており、多くの大学で教科書として採用されています。また、『こころの道標 浄土の真宗』という仏教に関する著作も執筆しています。

共編著も非常に多く、『新しい子ども家庭福祉』、『社会福祉用語辞典』、『保育用語辞典』、『子ども虐待 教師のための手引き』、『児童虐待とソーシャルワーク実践』、『子ども家庭福祉サービス供給体制 切れめのない支援をめざして』、『保育者の保護者支援』、『子どもの養育・支援の原理 社会的養護総論』など、多岐にわたるテーマで他の研究者や実務家と共同で著作を制作しています。これらの共編著からは、分野横断的な視点や、共同研究・共同作業を重視する姿勢がうかがえます。

これらの著作活動は、研究成果を広く社会に発信し、この分野の専門家だけでなく、学生や実務家にも新たな知見や視点を提供することに大きく貢献しています。特に、政策の動向や現場の実践ニーズを踏まえた著作が多く、教育や現場での研修資料としても広く活用されています。

柏女霊峰氏は、その学術的知見、実務経験、そして政策形成への貢献を通じて、日本の児童福祉・子ども家庭支援の進歩に不可欠な役割を果たし続けていると言えるでしょう。多角的な視点から子どもたちの幸福と健やかな育ちを追求するその活動は、今後もこの分野に大きな影響を与え続けると考えられます。

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