児童福祉

児童福祉とは

児童福祉とは、子どもたちが社会の一員として健やかに成長するために、国や地方自治体が行う福祉サービスの総称です。この概念は、単に「児童を保護する」というだけでなく、「子どもの福祉」という目的と、具体的な「児童福祉」という活動の両面を含んでいます。近年では、家庭や家族を重視した「子ども家庭福祉」という考え方も提唱されていますが、公的責任の低下や家族責任の強化につながる可能性も指摘されています。

子どもたちが直面する問題

児童福祉が対象とする問題は多岐にわたります。

児童労働

特に貧困国では、経済的な理由から多くの子どもたちが働かざるを得ない状況に置かれています。児童労働は、危険な環境下で行われることが多く、子どもたちの教育機会を奪い、将来の成長を阻害する要因となります。2016年の調査では、少なくとも1億5200万人の子どもが労働に従事していましたが、この数字には家庭内労働は含まれておらず、実際にはさらに多くの子供が労働を強いられていると考えられています。

犯罪と子殺し

一部の国では、子どもが犯罪を犯した場合、成人と同じように投獄されることがあります。イランや中国などでは、子どもに対する死刑も存在します。また、少年兵として利用される国では、子どもたちが捕虜になる危険性もあります。

児童虐待

児童虐待は、親や保護者が子どもに対して行う不適切な行為です。身体的虐待だけでなく、精神的虐待やネグレクトも含まれます。欧州評議会は、親の責任を「子どもの利益を目的とした行動」と定義しており、児童虐待は親がその責任を果たせない状況であると捉えています。

児童福祉の歴史

近代以前には、子どもは人格を持つ主体として扱われることは稀でした。しかし、資本主義社会の発展とともに、子どもを社会の一員として捉える考え方が生まれ、過酷な労働から守る必要性が認識されるようになりました。

子どもの発見

ルソーの『エミール』は、子どもを人格の主体として捉える端緒となり、「子どもの発見」として知られています。ルソーやエレン・ケイは、子ども期が成人期とは異なることを指摘し、子どもの貧困や労働搾取からの保護、家庭教育の重要性を主張しました。

国際的な動き

20世紀には、二度の大戦を経て、子どもの権利を擁護する動きが活発化しました。1924年のジュネーブ宣言、1959年の児童の権利に関する宣言を経て、1989年には児童の権利に関する条約が採択され、国際的な条約として実現しました。

欧米における児童福祉

世界最初の社会福祉制度であるイギリスのエリザベス救貧法では、子どもが保護の対象とされていました。1883年には児童虐待防止協会が設立され、1889年には児童虐待防止法が制定されました。また、1833年には工場法が制定され、過酷な労働から子どもを守るための取り組みが行われました。

日本における児童福祉

日本では、児童福祉法において、児童は「満18歳に満たない者」と定義されています。ただし、制度によっては「20歳未満」「18歳に達した後最初の年度末までの間にある者」など、定義が異なる場合があります。

関連法規

労働基準法：満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまで、児童を労働させてはならない。
民法：婚姻は18歳にならないとできない。
二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律：20歳未満の者は飲酒してはならない。
二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律：20歳未満の者は喫煙してはならない。
競馬法、モーターボート競走法、自転車競技法：20歳未満の者は、投票券を購入してはならない。

児童福祉に関する機関・窓口

児童相談所

都道府県と政令指定都市には、児童に関する様々な相談を受け付ける児童相談所が設置されています。児童相談所は、親からの子育て相談や児童虐待に関する通報を受け、適切な措置を指導したり、一時保護所に児童を保護したり、施設や里親への委託などの措置を行います。

児童委員

民生委員法に基づき、民生委員は児童委員を兼ねることになっています。児童委員は地域ごとに担当を持ち、児童に関する相談を受け付け、適切な制度を紹介したり、行政機関との連絡を行います。

施設における児童福祉

児童福祉施設では、家庭環境に恵まれない児童や、障害を持つ児童などに対して、生活支援や自立支援が行われています。

出典

HMG(英国政府)柏野健三訳『新福祉契約　英国の野心』帝塚山大学出版会、2008年。
* 千葉喜久也『児童・家庭福祉論（第2版）』みらい、2012年。

外部リンク

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