柏田貴史

柏田貴史（かしわだ たかし）は、1971年5月14日に熊本県八代市で生まれた元プロ野球選手（投手）です。左投げ左打ちのサウスポーとして知られています。

学生時代とプロ入り

小学校4年生から野球を始め、八代工業高校時代には投手として非凡な才能を発揮。高校在学中には、3度にわたってノーヒットノーランを達成するなどの実績を残しました。1989年のドラフト会議後、読売ジャイアンツにドラフト外で入団。プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせました。

ジャイアンツ時代（第一期）とMLB挑戦

プロ入りから数年を経て、1994年に念願の一軍公式戦への初登板を果たしました。この年にはプロ初勝利も記録しています。しかし、翌1995年にはイースタン・リーグ（二軍）で9勝を挙げ、最多勝のタイトルを獲得するなど二軍では安定した成績を残したものの、一軍では出場機会に恵まれず、なかなか定着できませんでした。

転機が訪れたのは1997年です。同年2月、ジャイアンツの野球留学制度を利用し、チームメイトの谷口功一と共にMLBのニューヨーク・メッツの春季キャンプに参加。ここでメッツの監督であったボビー・バレンタインの目に留まり、メッツから直接的な入団オファーを受けます。このオファーに応じる形で、巨人を自由契約となり、メッツに入団。同年5月1日にはメジャーリーグの公式戦でマウンドに立ち、セントラル・リーグの球団出身者としては初めての日本人メジャーリーガーという歴史的な一歩を刻みました。メジャーでは3勝を挙げましたが、投球内容には課題が残り（WHIPは1.69）、シーズン終了後にメッツから自由契約となりました。

ジャイアンツへの復帰とリリーフエースとしての活躍

1998年、再び日本のプロ野球界に戻り、古巣である読売ジャイアンツに復帰しました。メッツからの残留交渉に加え、他のMLB球団3球団、さらに日本のプロ野球11球団全てからオファーがあったという状況下での決断でした。本人は後に、巨人の条件が最も悪く、戻ってくるのが当然という態度であったと語っていますが、ドラフト外で入団し世話になった恩義からジャイアンツに戻ることを選びました。

復帰後の柏田投手は、それまでの先発や短いリリーフといった起用から、中継ぎ、特に左のワンポイントリリーフを専門とする投手として投球スタイルを確立します。1999年以降は毎年40試合以上に登板するなど、ブルペンにおいて左腕リリーバーの中心的存在としてチームを支え続けました。2000年にはチームが日本一を達成する際にも、その貢献は大きなものでした。

しかし、2002年頃からは、同じ左腕投手である前田幸長が中日から移籍加入したり、若手の岡島秀樹が台頭したりするなど、チーム内の競争が激化し、徐々に登板機会が減少していきました。そして、2005年にはシーズンを通して一度も一軍のマウンドに上がることができず、同年シーズン終盤に惜しまれながら現役引退を表明しました。

引退後のキャリア

現役引退後も、長年のプロ野球選手としての経験、特にメジャーリーグでの経験が高く評価され、読売ジャイアンツ球団に残る形で新たなキャリアをスタートさせました。プロの眼力を持つスカウトとして、若き才能を発掘する裏方の仕事に携わっています。

プロ野球選手としての主な記録としては、1994年4月12日に対横浜ベイスターズ戦での初登板および初奪三振、同年4月14日の同カードでの初勝利があります。また、リリーフとして活躍していた2003年4月25日の対横浜ベイスターズ戦ではプロ入り初のセーブも記録しています。

背番号は、入団当初の84（1990-1991年）、67（1992-1996年）、メッツ時代の18（1997年）を経て、巨人復帰後は長らく49（1998-2005年）を背負いました。日米両方のプロ野球を経験した稀有な左腕として、そのキャリアは多くの野球ファンに記憶されています。

もう一度検索