柔 (美空ひばりの曲)

シングル「柔」の概要

美空ひばりが1964年11月20日にリリースしたシングル「柔」は、日本の音楽史において重要な位置を占める楽曲です。この曲は、1965年に開催された第7回日本レコード大賞で受賞を果たし、同年の紅白歌合戦でも紅組のトリとして登場しました。特に1964年と1965年の2年連続で同曲を歌い上げたことは、その年の象徴とも言える出来事でした。しかし、この挑戦に対して一部マスコミからは「2年連続同じ歌を歌うとは非常識だ」といった厳しい声も寄せられました。

衝撃のヒット

「柔」は、1964年の東京オリンピックで柔道が正式競技として採用された背景もあり、発売からわずか半年で180万枚以上の大ヒットを記録しました。この売上は、美空ひばりの全シングルの中で最も高いものとなり、2019年現在も195万枚に達しています。特に、この楽曲は「テレビ主題歌が演歌では当たらない」というジンクスを打破した作品としても話題になりました。

テレビドラマとの関係

「柔」というタイトルは、同名のテレビドラマに由来しています。このドラマは日本電波映画が製作し、1964年から1965年まで日本テレビ系列で全3シリーズが放送されました。これらのシリーズすべてにおいて、楽曲「柔」が主題歌として使用されました。そのため、この楽曲は柔道をテーマにした一曲となり、作品のメッセージとも強く結びついています。

制作の背景

実は、美空ひばりは初めてこの曲の歌手としての依頼を受けた際、「柔道は男がやるもの」との理由で一度は断りました。しかし、監督の渡辺邦男が直接彼女に説得し、彼女の心を動かしました。また、当初別の作曲家が担当予定だったものの、渡辺監督の意向で古賀政男に変更されました。

翌年の1965年11月5日には、「柔」のアンサーソングとして「柔の男」がリリースされ、こちらも同じく彼女の歌唱により多くの支持を得ました。この曲の冒頭の歌詞「勝つと思うな、思えば負けよ」は、吉田兼好の名言からインスパイアを受けたものとも言われています。

歌唱スタイルと影響

ひばりは「柔」をステージで歌う際、多くの場合男装をしてパフォーマンスを行いました。このようなスタイルは、曲の持つ勇壮さと強さを引き立てる効果を生んでいました。また、本楽曲はその後も様々なリリースが行われており、カップリング曲が何度も変更されています。

さらに、漫画『YAWARA!』に登場するキャラクターがこの曲を口ずさんでいたこともあり、若い世代にまでその名を知れ渡っています。

2014年から2015年にかけては、古賀政男の信仰の地である川崎大師駅で接近メロディとしても使用され、時代を超えて多くの人に親しまれる楽曲となりました。

収録曲情報

オリジナル盤（EP）には

• - 柔

- 作詞：関沢新一、作曲：古賀政男、編曲：佐伯亮

• - ふり向かないで

- 作詞：石川潭月、作曲：古賀政男、編曲：佐伯亮

として収録されていました。後には様々なアレンジやカバーも行われ、多くのアーティストがこの楽曲を再解釈しています。

「柔」は、時代や世代を超えて愛され続ける金字塔的な作品として、今でも多くの人々に影響を与えています。

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