渡辺邦男

渡辺 邦男（わたなべ くにお）

渡辺邦男は、1899年6月3日に静岡県で生まれ、1981年11月5日に生涯を閉じた日本の映画監督であり俳優です。彼は大正・昭和の時代に活躍し、映画界に多大な影響を与えた人物として知られています。

経歴

渡辺は旧制静岡県立沼津中学を卒業後、早稲田大学商学部に進学し、左翼運動家として活動する傍ら、映画や演劇に関与し始めました。卒業後、朝日新聞社に勤務するも「もぐり入社」として退社。その後、劇団に所属し地元を巡業しましたが、結局解散を迎えることになります。

日活の撮影所長、池永浩久に紹介を受けた渡辺は、俳優として初めてのキャリアをスタートし、1924年には『青春の歌』で映画デビュー。数々の苦労を経て助監督として名を馳せ、1928年に『剣乱の森』でついに監督としてデビューしました。

渡辺は特に「早撮り監督」として知られ、1934年の『さくら音頭』では他社を凌ぐ速度で作品を完成させました。この成功により彼の名声は高まり、戦中も多くの作品を手がけました。1935年には国策映画『召集令』、翌年には『高橋是清伝 前・後篇』などが話題を呼びました。

東宝に移籍後は、1939年の『白蘭の歌』が大ヒットを記録。戦後は、新[[東宝]]に移り、『今日は踊って』や『誰か夢なき』などを監督し、早撮りのスタイルを確立しました。1956年には年間12本の映画を撮影し、大蔵貢社長の指導のもと新[[東宝]]を再生させる原動力となりました。

1957年には『明治天皇と日露大戦争』が大ヒットし、このことから「渡辺天皇」と呼ばれるほどの立場を確立しました。60年代には一時映画の制作が減少したものの、テレビにも進出し、『右門捕物帖』などでその才能を発揮し続けました。

1970年、最後の映画として『姿三四郎』を監督。それから数年後の1975年には勲三等瑞宝章を受章し、そのキャリアを終えました。健康を害し1976年に引退し、1981年に肺炎で82歳で亡くなりました。

人物・エピソード

渡辺は、映画制作中にしばしばユニークな行動をしていたことで知られます。特に「カット」を叫ぶ際には、鳥打帽を地面に投げつける癖があり、ある撮影ではその帽子を踏み外してしまい、病院送りになったエピソードが残っています。また、独自の演出スタイルで、微細な撮影技術を駆使し、観客に喜ばれる作品を生み出しました。

愛称の「クニさん」とともに、口ひげがトレードマークでした。彼は映画界で「早撮りの横綱」と称され、多くの弟子たちが彼の撮影技法を学びました。また、家族には映画監督となった息子や、様々な職業に就く兄弟姉妹がいます。

渡辺は映画やテレビで多くの作品を残し、計225本とも言われる作品数を誇ります。彼が監督した映画は、今も日本映画史に名を刻んでいます。

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