柘植雅義

柘植 雅義（つげ まさよし）氏は、1958年に愛知県で生まれた日本の特殊教育学者です。現在、筑波大学の教授であり、日本LD学会の理事長として、長年にわたり日本の特別支援教育の分野を牽引しています。

柘植氏は、まず愛知教育大学で数学を学び、1981年に教育学部を卒業しました。その後、同大学院の数学教育専攻修士課程を1983年に修了しています。専門分野を特殊教育へと広げたのは、筑波大学大学院教育研究科の障害児教育専攻修士課程に進学してからで、1988年に課程を修了しました。さらに研究を深め、「精神遅滞児の授業場面における数学的言語行動の解析的研究」というテーマで論文を執筆し、1995年に筑波大学から教育学博士の学位を取得しています。

研究者としてのキャリアは、1994年に国立特殊教育総合研究所の研究員としてスタートしました。ここでは、障害のある子どもたちの教育に関する実践的な研究に携わりました。1997年には、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員として海外の研究動向を学びました。帰国後、2000年には国立特殊教育総合研究所の軽度知的障害教育研究室長に就任し、研究活動の中心的な役割を担いました。2001年には文部科学省の特別支援教育調査官として、国の特別支援教育施策の立案や推進にも深く関与しています。

大学教育の現場にも身を置き、2006年には兵庫教育大学の教授に着任しました。その後、2010年からは再び国立特別支援教育総合研究所に戻り、上席総括研究員および教育情報部長として要職を務めました。そして2014年からは、母校である筑波大学に移り、人間系障害科学域の知的・発達・行動障害学分野で教授を務めています。また、特別支援教育研究センター教授や、附属大塚特別支援学校の校長も兼任するなど、研究、教育、学校現場の運営と多角的に貢献しています。

柘植氏の研究は、学習障害（LD）、注意欠陥・多動性障害（ADHD）、高機能自閉症といった発達障害を含む、多様な教育的ニーズを持つ子どもたちへの理解と、効果的な支援方法の開発に重点が置かれています。これらの分野に関する多くの研究論文を発表しており、その成果は国内外で高く評価されています。

また、専門知識の普及にも熱心であり、多くの著書や編著書、翻訳書を出版しています。『[学習障害] 理解とサポートのために』（中公新書）、『特別支援教育 多様なニーズへの挑戦』（中公新書）といった単著は、一般読者や教育関係者にとって、LDや特別支援教育を理解するための入門書として広く読まれています。さらに、『現場で役立つ特別支援教育ハンドブック』、『発達障害のある子への最適サポート&ツール』シリーズ、『ユニバーサルデザインの視点を活かした指導と学級づくり』など、教育現場で実践に役立つ共編著も多数手掛けています。これらの著作活動を通じて、特別支援教育に関する最新の知見や実践的なノウハウを広め、教育現場の質的向上に大きく貢献しています。

日本LD学会の理事長として、関連分野の学術研究の発展や、専門職の育成、啓発活動にも精力的に取り組んでいます。その多岐にわたる活動は、日本の特別支援教育システム構築と、障害のある子どもたちがより良い教育を受けられる環境整備に不可欠な貢献をしています。柘植雅義氏は、日本の特殊教育・特別支援教育分野における第一人者として、その学識と実践力をもって、教育現場と研究領域の架け橋となり続けています。

柘植氏の提唱する支援方法や考え方は、多くの教育関係者や保護者にとって指針となっており、日本の特別支援教育の進展に今後も重要な影響を与え続けるでしょう。

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