柳澤純

柳澤純氏（1963年8月31日生まれ）は、日本の生命科学者として知られる人物です。

東京大学や筑波大学で教職を務め、生命制御ネットワークの研究で成果を上げたものの、科学研究における不正行為が露見したことにより、そのキャリアを断念せざるを得なくなりました。

東京都に生まれた柳澤氏は、自ら「流されやすく、飽きっぽい」性格であると語ります。当初は経済学や数学など、生物学以外の分野にも多数合格する高い学力を示しながらも、生物学者であった両親の影響を受け、最終的に東京大学教養学部理科二類に進学しました。しかし、大学時代は必ずしも学業に熱心ではなかったようで、薬剤師国家試験や放射線取扱主任者試験には3度にわたり不合格となり、必修のドイツ語の単位も全て落とすなど苦労した経験を持ちます。本来であれば留年するところであったものの、事務処理上の手違いにより3年次に進級。その後、友人の勧めもあり、東京大学薬学部へと進路を定めました。

1987年に東京大学薬学部を卒業後、同大学大学院薬学系研究科にて修士課程（1989年修了）、博士課程（1992年修了）を修め、博士（薬学）を取得しました。大学院時代はDNA修復に関する研究に従事したといいます。博士課程修了後の1992年4月からは、三菱化成総合研究所（現在の三菱化学科学技術研究センター）で研究員として活動。生命の根幹をなすメカニズムをDNAレベルで理解し、制御することを目標としました。1993年からはアメリカに渡り、ラホヤ癌研究所、次いで1995年3月からはコロンビア大学耳鼻咽喉科にて博士研究員として細胞死の研究に携わりました。

1996年12月に帰国後、東京大学分子細胞生物学研究所に助手として着任します。ここでは加藤茂明教授の研究室に所属し、生理活性を持つ小さな分子に着目し、核内レセプターをはじめとするタンパク質やRNAがどのように生命現象のネットワークを制御しているのかを解明する研究に取り組みました。特に、老化、癌化、線維化といった疾患のメカニズム解析と治療法開発を目指していたということです。この間、研究成果が評価され、2008年には第5回（平成20年度）日本学術振興会賞を受賞しています。2002年2月には同研究所の助教授に昇進。同年4月からは筑波大学に移り、大学院生命環境科学研究科教授、2008年12月からは先端学際領域研究センター教授として研究・教育活動を続けました。

順調に研究者としてのキャリアを築いていた柳澤氏に転機が訪れます。発表した論文において、画像の使い回しによる捏造の疑惑が生じたのです。この問題に対し、筑波大学は調査を実施。その結果、画像に改ざんがあったと認定する調査結果を2014年3月に発表しました。これを受け、柳澤氏は同月をもって筑波大学を辞職するに至りました。この出来事は、科学研究における倫理の重要性を改めて問うものとなりました。興味深いことに、柳澤氏が過去に所属していた東京大学の加藤茂明研究室の加藤教授もまた、同時期に論文の改ざんなどの不正が発覚し、東京大学を辞職しています。柳澤氏のケースは、一部研究者による不正行為が日本の科学界全体に与える影響を示す事例の一つとして記憶されることとなりました。

もう一度検索