柴田敏雄

柴田 敏雄

柴田 敏雄（しばた としお）は、1949年に東京都で生まれた、現代日本を代表する写真家の一人です。彼の創作活動は、絵画から写真へと移る独特なキャリアパスを辿っており、国内外で高い評価を得ています。

初期キャリアと写真への道

柴田はまず絵画の世界に足を踏み入れました。1968年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に入学し、1974年には同大学大学院美術研究科の油画専門課程（修士課程）を修了しています。絵画の研究を深めた後、彼は表現の媒体を写真へと転換させます。この大きな転機となったのは、大学院修了後の1975年、ベルギー文部省からの奨学金を得て、ゲント市にある王立アカデミー写真科に入学したことです。ここで柴田は本格的に写真の技術と表現を学び始め、翌1976年にも再びベルギー文部省から奨学金を受けるなど、集中的に写真制作に取り組みました。1979年に日本へ帰国します。

写真家としての活動と教育者として

帰国後、柴田敏雄は写真家としての活動を本格化させ、日本国内および海外で精力的に個展を開催するようになります。彼の作品は、特に日本の風景や地形を独自の視点から捉えたものが知られています。ダムや道路、橋などの人工構造物が自然景観の中に存在する様子を、静謐かつ緻密な構図で切り取った作品は、自然と人工の相互作用に対する深い洞察を示唆しています。

写真家としての創作活動と並行して、柴田は写真教育にも携わりました。1987年から2007年まで東京綜合写真専門学校で教鞭をとり、また1988年から1991年までは筑波大学で専任講師を務めるなど、次世代の写真家育成にも貢献しています。

受賞と主要作品

柴田敏雄の功績は広く認められており、1992年には第17回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。これは日本の写真界において最も権威ある賞の一つであり、彼の作品が高い評価を得ていることを証明しています。

主要な作品としては、以下のような写真集があります。

『日本典型』 (朝日新聞社, 1992年)
『VISIONS of JAPAN SHIBATA Toshio』 (光琳社出版, 1998年)
『ランドスケープ 柴田敏雄』 (旅行読売出版社, 2008年)
『a View』 (Akio Nagasawa Publishing, 2009年)
* 『For Grey』 (Akio Nagasawa Publishing, 2009年)

また、個展も多数開催しており、1982年のツァイト・フォトサロンでの「ディオラマのように」展や、2008年の東京都写真美術館での「ランドスケープ 柴田敏雄展」などが挙げられます。

柴田敏雄は現在も第一線で活動を続け、その作品は国内外の美術館に収蔵されるなど、現代写真史における重要な位置を占めています。彼の作品は、私たちが日々目にしている風景に対する見方を問い直し、新たな視点を提供しています。

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