柵口温泉

柵口温泉（ませぐちおんせん）は、新潟県糸魚川市に位置する温泉地です。能生川の渓流沿いに開けた山間部にあり、自然豊かな環境に囲まれています。

交通アクセスとしては、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの能生駅から南東へおよそ9キロメートル。新潟県道246号線が付近を通っており、車でのアクセスが便利です。この温泉地は、能生川が支流である湯沢川と合流する地点の近くに位置しています。また、温泉地のさらに南南西にある権現岳や鉾ケ岳といった山々への縦走登山の出発点としても利用されています。能生駅からバスを利用する場合、糸魚川バス「13 能生線」に乗車し、約20分から25分で到着します。

この地域には、古くから25℃程度の比較的低い温度の湯が湧出する地点がありました。しかし、本格的な温泉地としての開発は、比較的新しいものです。地域振興の促進と、1986年（昭和61年）1月に発生し大きな被害をもたらした柵口雪崩災害からの復旧・復興を目的として、同年から当時の能生町が中心となり、掘削による温泉開発が進められました。これにより、より豊富な湯量と適温の温泉が利用可能となり、温泉地としての発展が始まりました。

柵口温泉には、温泉施設を備えた旅館が複数軒営業しています。中でも、かつて糸魚川市が運営していた「権現荘」は中心的な存在でした。権現荘は、1988年（昭和63年）3月まで実際に使用されていた旧上能生小学校の校舎を改築し、同年8月に新たな宿泊・温泉施設として開業したという、ユニークな歴史を持っています。これは、廃校となった公共施設の再利用事例として注目を集めました。開業後、利用者の増加に伴い、新館や別館が増築されましたが、2010年頃には旧小学校部分での宿泊は中止され、後に建物自体も解体されました。また、権現荘に隣接して、市営の日帰り入浴施設「柵口温泉センター」も営業していましたが、こちらは2015年7月に閉鎖されています。権現荘の運営形態は変遷をたどっており、2017年度からは指定管理者制度による運営が行われていました。しかし、2023年（令和5年）4月からの新たな指定管理者（3年間の契約期間）を募集したものの、応募者がいなかったため、2023年度からは当面の間、糸魚川市が直接運営する形で、日帰り温泉施設としてのみ営業を続ける方針となりました。その後、糸魚川市は地域活性化を図るため、2034年3月末までの継続営業を条件として、権現荘を民間に譲渡する方針を2023年6月に決定しました。今後の権現荘の動向が注目されています。

柵口温泉の周囲には、様々な施設や自然景観が存在します。

シャルマン火打スキー場: 新潟県道246号線を温泉地からさらに山奥へ進んだ場所に位置するスキー場です。「火打」の名を持ちますが、火打山の斜面ではなく、別の山に開発されたゲレンデです。
グリーンメッセ能生: スキー場開発とほぼ同時期に、能生町主導で整備されたゴルフ場です。
西飛山ダム: シャルマン火打スキー場よりもさらに山間部へ進んだ先に建設されたダムです。火打山はこのダムよりもさらに奥地にあります。
雪崩資料館: 温泉開発の契機の一つとなった柵口雪崩災害に関する資料を展示している施設です。
茶釜滝: 柵口温泉から新潟県道246号線を海側へ向かった場所にある滝です。能生川の支流の一つにかかっています。
島道鉱泉: 能生川のもう一つの支流、島道川沿いに位置する鉱泉地です。

これらの周辺施設は、温泉滞在と合わせて地域の自然や歴史、レジャーを楽しむ拠点となっています。柵口温泉は、糸魚川ジオパークの一部としても位置づけられており、その地質や景観も魅力の一つです。

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