栃木孝惟

栃木孝惟氏：日本中世文学研究の第一人者

栃木孝惟氏は1935年生まれの日本の国文学者であり、日本中世文学、特に軍記物語を専門としています。その研究内容は深く広く、日本の歴史と文学に多大な貢献を果たしました。

東京府下谷区で生まれ、埼玉県立浦和高等学校を経て、1959年に東京大学文学部国文科を卒業しました。その後、東京大学大学院博士課程に進み、1966年に単位取得満期退学。その後、千葉大学において講師、助教授、教授と順調にキャリアを積み重ねました。1980年には教授に昇進し、長年にわたり後進の育成にも尽力しました。1998年には千葉大学を退官、名誉教授の称号を授与されました。退官後は清泉女子大学教授として教鞭を執り、2005年に同大学を退職しました。

栃木氏の研究は、日本中世文学、とりわけ軍記物語に焦点を当てています。数々の著作を通して、軍記物語の成立過程や歴史的背景、物語に込められた思想などを詳細に分析し、その研究成果は高く評価されています。単に物語の解釈にとどまらず、当時の社会情勢や武士の思想、歴史意識といった多角的な視点から考察を加えることで、従来の研究を大きく前進させる貢献を果たしました。

主な著書としては、『軍記と武士の世界』（吉川弘文館、2001年）、『軍記物語形成史序説 転換期の歴史意識と文学』（岩波書店、2002年）、そして最新の著書となる『源頼政と『平家物語』』（吉川弘文館、2023年）などが挙げられます。これらの著書は、軍記物語研究において必読書として広く読まれ、多くの研究者や学生に影響を与えています。

また、共編著も多く手掛けています。代表的なものとして、『平家物語』（市古貞次共著、明治書院、1971年）、『保元物語 新日本古典文学大系 43』（岩波書店、1992年）、『平家物語の成立』（有精堂出版、1993年）、『保元物語の形成』（汲古書院、1997年）、『平治物語の成立』（汲古書院、1998年）、『延慶本平家物語 1』（谷口耕一共編、汲古書院、2000年）、『軍記文学の始発 初期軍記』（汲古書院、2000年）、『延慶本平家物語の世界 校訂延慶本平家物語 別巻』（松尾葦江共編、汲古書院、2009年）などがあります。これらの共編著は、それぞれのテーマにおいて重要な資料を提供し、研究を進める上で欠かせないものとなっています。

栃木孝惟氏の研究は、単なる学問的な探求にとどまらず、日本の歴史と文化の理解を深める上で重要な役割を果たしています。その業績は、後世の研究者たちに大きな影響を与え続け、日本の国文学研究に多大な貢献をしたことは間違いありません。今後の更なる研究の発展にも期待が高まります。

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