栄光のハリウッド

『栄光のハリウッド』(1932)：華麗なるハリウッドの裏側と女性の運命

1932年製作のアメリカ映画『栄光のハリウッド』(原題: What Price Hollywood?)は、プレコード時代のハリウッドを描いたドラマ作品です。監督はジョージ・キューカー、主演はコンスタンス・ベネットが務め、後の名作『スタア誕生』の原型となった作品として知られています。

夢と挫折、そして愛：複雑に絡み合う人間模様

ウェイトレスとして働くメアリーは、才能を見出され、ハリウッドで女優としての道を歩み始めます。華やかなスターダムを掴み、裕福な青年と結婚しますが、名声と成功の裏では、愛や友情、そして自身のアイデンティティとの葛藤が待ち受けていました。

映画は、メアリーの目を通して、ハリウッドの光と影を鮮やかに描き出します。成功への階段を駆け上がっていく一方で、彼女は周囲の人々との関係に苦悩します。特に、彼女をスターダムへと導いた恩人である映画監督マックスとの関係は、物語の中心的な軸となっています。マックスは、自身のキャリアの終焉を悟り、悲劇的な最期を迎えます。

メアリーは、スターとしての栄光と、失われた愛との間で揺れ動き、葛藤します。彼女はハリウッドを去り、新たな人生を歩み始めますが、過去との決別は容易ではありません。最終的には、真実を知った夫との再会を経て、メアリーは穏やかな幸せを掴むことになります。

実話に基づく物語と『スタア誕生』への影響

『栄光のハリウッド』は、当初『The Truth About Hollywood』というタイトルで企画されました。脚本は、女優のコリーン・ムーアや、彼女の夫であるプロデューサー、そして自殺した映画監督といった実在の人物から着想を得て書かれたと言われています。

興味深いことに、この映画は1937年公開のウィリアム・A・ウェルマン監督による『スタア誕生』に大きな影響を与えたと言われています。両作品のプロットには類似点が多く見られ、実際に『スタア誕生』の監督候補としてジョージ・キューカーにオファーがあったものの、類似性から断られたという逸話も残っています。この類似性をめぐっては、訴訟問題に発展する可能性もあったものの、最終的には回避されました。

評価とその後

公開当時は興行的に成功したとは言えなかったものの、『栄光のハリウッド』は、アカデミー賞原案賞にノミネートされるなど、一定の評価を得ています。主演のコンスタンス・ベネット自身も、この作品を自身の出演作の中で最高傑作と考えていたと伝えられています。

『栄光のハリウッド』は、ハリウッドという華やかな世界の裏側にある、人間の欲望や葛藤、そして儚い夢を描いた作品です。プレコード時代のハリウッド作品を知る上でも、また、後の『スタア誕生』へと繋がる作品を理解する上でも、重要な作品となっています。華やかな世界の裏側にある苦悩と、それでもなお輝く人間の強さを描いた、見応えのあるドラマと言えるでしょう。

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