栄春院

栄春院は、岐阜県安八郡神戸町に所在する曹洞宗の寺院です。山号を広大山と称し、本尊には十一面観世音菩薩が祀られています。この寺院は、大垣藩主であった戸田氏と深い関わりを持っています。

創建の背景には、大垣藩初代藩主・戸田氏鉄の息女であり、本多正勝の正室であった栄春院の物語があります。栄春院は、夫の配流に伴い実家に戻っていましたが、重い眼病に苦しんでいました。そんな折、彼女は霊夢を見、春日郷の観音寺を信仰したところ、不思議なことに眼病が治癒したのです。この霊験に深く感じ入った栄春院の兄、戸田氏信は、万治3年（1660年）に、戸田家と本多家両家の菩提を弔うため、安八郡平野村に観音寺の十一面観世音菩薩を迎え、栄春院を建立しました。

栄春院は、その歴史の中で一度、大正年間に火災に見舞われ、伽藍を焼失するという大きな被害を受けました。しかし、その後、地域の人々の尽力により再建され、現在に至っています。この寺院は、戸田氏の歴史と、栄春院の信仰心、そして人々の復興への願いが込められた場所と言えるでしょう。

参考文献：
神戸町『神戸町史　下巻』p635 1970年

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