栄養要求株

栄養要求株とは

栄養要求株（えいようようきゅうかぶ）とは、微生物において特定の栄養素を必要とする突然変異株のことを指します。一般的に微生物、特に細菌や菌類の培養に際して、成長に不可欠な栄養分が含まれた培地を使用します。こうした微生物は、その培地から栄養を吸収して成長しますが、必要な栄養成分が不足している状態では、成長が妨げられることになります。

そのため、培地から余分な栄養分を取り除いていくことで、微生物が成長するために最低限必要な栄養素の種類を特定することができます。この特定された栄養素を「栄養要求」と呼び、これに基づいて作成された培地が最小限の栄養で構成された「最少培地」となります。

栄養要求の多様性

栄養要求は微生物の種によって異なり、必要とされる栄養素の種類や量にもばらつきがあります。例えば、アカパンカビは比較的少数の成分、具体的には炭素源としての糖類、窒素源としての硝酸塩とビオチン、さらに若干の無機塩類があれば成長が可能です。このような例は、栄養要求における最低限の条件を示しています。

しかし、同じアカパンカビでも特定のアミノ酸が培地中に存在しなければ生育しない株が発見されることもあります。このような株は、通常の野生株から突然変異によって生まれることが多いです。このように、栄養要求が変化した微生物株を「栄養要求株」と呼び、特に要求される栄養素の種類に応じて名称を付けます（例：アミノ酸要求株）。これに対し、元々の栄養要求を持つものは「野性株」もしくは「原栄養株（prototroph）」と呼ばれます。

突然変異のメカニズム

栄養要求株の出現は、主に突然変異に起因しており、特に酵素の欠失が一因とされています。例えば、アカパンカビは通常、培地にアミノ酸が含まれていなくても成長することが可能です。これは、培地内の成分からアミノ酸を合成する能力を持つ酵素群が存在するためです。もし、その合成に関連する酵素のいずれかが欠陥を持つ変異株が存在すると、その場合、外部からその栄養素を取り入れなければならなくなります。

また、栄養素の合成経路が解明されていれば、その経路の中間産物を与えることで、どの段階で問題が生じているかを特定することも可能です。このような研究プロセスを通じて提唱されたのが「一遺伝子一酵素説」です。

このように、栄養要求株は微生物学のさまざまな側面を理解する手助けとなり、微生物の成長必要条件の解明に寄与しています。微生物の栄養要求に関する知見は、農業や医療、バイオテクノロジーなど多様な分野において応用が期待されます。

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