株式買取請求権

株式買取請求権：株主の権利と会社への請求

はじめに

株式買取請求権とは、株主が会社に対し、保有株式の買取りを請求できる権利です。日本の会社法では、大きく分けて二つのケースでこの権利が認められています。一つは、単元未満株式の買取り請求、もう一つは、合併などの企業再編における反対株主による請求です。本稿では、それぞれのケースについて、詳細に解説します。

1. 単元未満株式の買取請求権

上場企業の株式取引では、単元株制度が一般的です。しかし、株式分割や合併などを通じて、株主が単元未満株式を保有することがあります。単元未満株式は、議決権など多くの権利が制限され、市場での売買も困難です。そのため、株主が自由に株式を処分できるように、会社に買取りを請求できる権利が認められています。

この請求権は、株主の財産権を保護するための重要なものです。単元未満株式の保有は、株主にとって不利益となるため、この制度は公平性を保つ上で不可欠です。

2. 反対株主の株式買取請求権

会社が合併や事業譲渡などの企業再編を行う場合、株主総会で決議が行われます。この決議に反対する株主は、会社との関係を解消するため、保有株式の買取りを請求できます。これは、反対株主の権利保護に繋がる重要な制度です。

2.1 請求権が発生するケース

反対株主の株式買取請求権は、以下の様な場合に発生します。

定款変更（譲渡制限の規定など）
種類株式の発行や譲渡制限
株式併合による端数の発生
事業譲渡
* 吸収合併、吸収分割、新設合併、新設分割、株式移転、株式交換

これらのケースにおいて、反対株主は会社に対し、公正な価格での株式買取りを請求できます。

2.2 請求権行使と手続き

反対株主が請求権を行使するには、事前に会社に反対の意思を通知し、株主総会で反対する必要があります。請求後の株式買取価格については、会社と株主間で協議を行い決定します。協議が不調に終わった場合は、裁判所に価格決定を申し立てることができます。裁判所は、非訟事件として審理を行い、価格を決定します。この決定に対しては、即時抗告が可能です。

3. 株式買取請求の撤回

株主は、会社の承諾を得た場合に限り、株式買取請求を撤回できます。

4. 価格決定と裁判

株式買取価格に関して、会社と株主間の協議が成立しない場合は、裁判所への価格決定申立てが可能です。裁判所は、公正な価格を決定するため、様々な要素を考慮します。

5. 過去の事例

過去には、カネボウ（現クラシエホールディングス）、東京放送ホールディングス（現TBSホールディングス）、関西スーパーマーケット（現関西フードマーケット）など、多くの企業で反対株主による株式買取請求が行われています。これらの事例は、株式買取請求権の行使に関する重要な判例となっています。

まとめ

株式買取請求権は、株主の権利を保護する重要な制度です。単元未満株式の保有や企業再編における反対意見の表明など、様々な状況において、株主は会社に対し株式の買取りを請求できます。ただし、請求権行使には一定の手続きが必要であり、価格決定においては裁判による判断がなされる場合もあります。企業再編や株式取引に関わる全ての関係者は、この制度について十分な理解を持つことが重要です。

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