核廃棄物隔離試験施設

米国核廃棄物隔離試験施設 (WIPP) の概要

米国核廃棄物隔離試験施設(Waste Isolation Pilot Plant, WIPP)は、アメリカ合衆国初となる、核兵器開発に伴って発生した高レベル放射性廃棄物の地層処分施設です。ニューメキシコ州カールズバッドの東約42kmに位置し、核燃料サイクルの最終段階を担う重要な施設となっています。

歴史と立地

WIPPの建設構想は1974年に米国エネルギー省によって打ち出されました。その後、20年以上にわたる綿密な地質調査、住民への説明会、法整備を経て、1999年3月に操業を開始しました。当初計画では、2070年までの廃棄物搬入が予定されています。2010年時点ではすでに9000回以上の廃棄物搬入実績があります。現在も周辺地域の地質調査は継続されており、地層の安定性を確認する取り組みが行われています。

WIPPの立地選定においては、地質学的安定性が重要な要素となりました。テキサス州西部からニューメキシコ州南東部にかけて広がるデラウェア盆地の岩塩層が、その条件を満たす最適地として選ばれました。廃棄物貯蔵場所は、地下655mの深さに位置する、厚さ約1000mの岩塩層中に構築されています。岩塩層の可塑性を利用することで、亀裂の自己修復による自然な封印効果が期待されています。ただし、ドイツのアッセII研究鉱山における岩塩層処分施設での事例では、地下水への放射性物質漏洩が報告されており、貯蔵空間の圧縮や岩塩ドームの崩落といったリスクも懸念されています。

廃棄物と安全対策

WIPPには、アルファ崩壊を起こし、半減期が20年以上、放射能レベルが100 nCi/グラム以上の超ウラン元素を含むTRU廃棄物が搬入されてきました。2000年9月からは、放射性廃棄物とその他の危険物を混合した廃棄物の受入れも開始されています。

廃棄物中の水分による水素爆発のリスクを軽減するため、廃棄物収納容器には通気機能が設けられています。また、全米各地からの廃棄物搬送は、衛星追跡システム等による厳重な警備体制の下で行われています。搬送ルートにおける事故発生を想定し、WIPPでは23000名にも及ぶ専門家による非常事態対応訓練が実施されています。

施設管理と未来への備え

WIPPの操業中、そして2070年の施設閉鎖後も、環境汚染防止のための隔離・管理は継続されます。米国環境保護庁は、管理期間を1万年と設定しています。予測不能な未来への備えとして、さまざまな未来への警告措置が検討されています。敷地周辺には土塁が築かれ、多数の警告標識が設置される計画です。警告文には、英語、ロシア語、中国語、フランス語、アラビア語、スペイン語といった国連公用語に加え、ナバホ語も使用される予定です。ナバホ語が採用されるのは、ニューメキシコ州にナバホ族の準自治領（ナバホ・ネイション）が存在するためです。象形文字による警告も検討されています。

WIPPは、核廃棄物処理における重要な役割を担う施設であり、その安全性と長期的な管理は、人類全体の課題として継続的に取り組むべき重要な問題です。

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